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VR住宅ベンチャー社長に聞いた、変わり...

VR住宅ベンチャー社長に聞いた、変わりゆく住宅業界の未来

株式会社スペースリー
森田博和 社長
VRインタビュー記事
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株式会社スペースリー 森田博和 社長株式会社スペースリー 森田博和 社長

 ここ数年、「VR」という言葉を耳にすること多くなってきました。特にゲーム分野での活用が注目を集めている中、住宅業界でもVRを使ったサービスが増えてきています。VR事業を行うスペースリーの森田博和社長に、住宅におけるVRの活用とIT化が与える影響について大学生記者の松藤が伺いました。

【株式会社スペースリー】
2016年より、360度VRコンテンツを作成できるクラウドソフト「Spacely」を開発。これまで不動産を中心に600社以上が利用。所在地は、東京都渋谷区恵比寿。

VRとは「その場にいるように感じさせる技術」

――森田さんはVR事業を手掛けられていますが、そもそもVRとはどういった技術なのですか。

 VRとはバーチャルリアリティ、日本語に訳すと仮想現実と言われているものです。でも、バーチャルという言葉は「仮想」という意味のほかに「本質的な」という意味もあるので、「本質的な現実」。つまり、ある一つの世界に入りこんでいるように脳を勘違いさせる技術です。

 VRといってもハイエンドなものと手軽なものとがあって、ハイエンドなものは、外部のパソコンに接続するものなので高性能かつ高価格です。使用例として、デベロッパーが建設の設計段階で高い精度の視覚的な情報が必要な時に使われることがあります。一方、手軽なものというのは、スマホをVR用ゴーグルにセットするだけで体験できる、大衆向けに精度を落とした低価格なものです。当社が開発しているのは手軽なもので、3Dグラスをスマホにセットして簡単に使えるものを作っています。

――最近では不動産や住宅分野でVRを使ったサービスが増えてきました。VRを使うとどんなメリットがあるのですか。

 VRはテキストと違い、空間の広さや部屋の雰囲気が味わえるというところにあります。それから、うちのサービスを導入してVR内見を行っている企業の例だと、問い合わせ率が1.5倍となったところや成約率が4割から6割に向上したというところがあります。多くの消費者は写真が充実、綺麗であることで問い合わせをするなど行動に大きく影響しているとはと思いますが、それと同様の延長と言いますか、よりわかりやすく、主体的に見たいところがぐるりと全部見られるコンテンツだから、というのが理由だと思いますね。これらは不動産に主に展開しているので、不動産分野が主ですが、リフォーム分野でも同様の効果は出てくるものと考えています。

VRで物件を見てみると...

◆ここで、実際にVRを体験させてもらうことに!

森田さんのパソコンで物件映像のQRコードを表示してもらい、自分のスマホで読み取ると、パソコンと同じ物件の画面が現れました。そして、スマホに同社独自開発の3Dグラスをセットして、見てみると...

おおお!みえました。部屋の中にいるみたい!顔を動かせば、その方向に画面も動く!しかも、スマホの画面がパソコンの方にも反映されている!

でも、私は思いました。

――これって、グラスをつけて見るより、スマホで見たほうが見やすくないですか。わざわざVRを使う必要はあまりないと思うのですが。

スペースリー 実際にVRを体験させてもらう

 何でもVRを使えばいいというわけではなくて、使ったほうがいい場面もあればそうじゃない場面もあります。間取りや写真を見ただけでは、ここにキッチンがあって、ここに窓があるといったことが分かりづらいですが、VRだと感覚として分かるので、イメージが掴みやすくなります。天井高なんかもそうですね。テキストでは分からない。VRを使うと、その空間の中に入っているように感じられるので、そういった部分ではいいと思います。後は、よく考えて工夫して設計されている場合です。設計者はプロなので図面を見ただけで分かるのですが、一般の消費者はテキストの情報だけでは工夫されていることが分からないということがあります。

――なるほど、使い分けが大事なのですね。

 それから、お客さんがVRで物件を見ている映像が、同時に営業マンの方でも確認できるので、ミスコミュニケーションが減らせます。お客さんと営業マンが離れていても接客ができるというもVRを使うメリットです。

情報が広がり、住宅展示場あり方も変わりつつある

――VRで実際に足を運ばなくても内見ができることが分かりました。VR技術を使えば、モデルルームを実際に建てなくても、映像で作ってしまえばよいのではと思うのですが。

 今は住宅展示場に訪れるお客さんの目的も変わってきていて、一昔前だったら一日中かけてたくさんのモデルルームを回っていたところ、今はネットで事前に最低限の情報を得ているので、確認という形で物件を絞った状態で足を運ぶ方が増えてきています。

――じゃあ、VRが一般化したり、もっと情報にアクセスできるようになったりすると、いずれ住宅展示場もなくなるのでしょうか。

 今は多くの物がネットで買える時代ですけど、実店舗がなくならないのと同じで、展示場がなくなることはないと思います。展示場でやっていた仕事は減るけど、展示場じゃなきゃ伝えられないことがあると思うので。

――それは具体的にはどういったことですか?

 展示場に行って実際に目で見て確かめたり、営業マンに会ったりすると安心感、説得感が得られますよね。家を買うのは大きな買い物なので、オンラインの情報だけでは消費者は不安です。そういう点において展示場は重要な役割を担っています。これからは事前の情報と組み合わせて、展示場で伝えるべきものが変わってくるとは思っています。お客さんに合わせた生活の仕方をカスタマイズするような、コンサル的な生活の提案の場というように展示場のあり方が変わっていくと思いますね。

スペースリー VRゴーグルを覗く

IT化が進むと仕事がよりクリエイティブに

――そのように、住宅業界でIT化が進むと仕事の内容も変わっていきそうですね。

 そうですね。変わることになると思います。提案の力が求められてくると思いますね。デザイン性とか、より顕著になっていく。よりクリエイティブになると思います。360度VRの活用で業務は効率化するので、新たな付加価値を提供しないといけなくなり、大体のしにくいクリエイティブの要素が差別化として増えていきます。また、消費者の多様性などのマクロな変化もあり、そうならざるを得ないということです。VRはよりデザインなどそういった見た目の良さが際立つようになり、自ずと仕事にとってもクリエイティブな部分を発揮することが求められるようになると思います。

――消費者にはどんな変化があると考えますか。

 VRなんて360度見えるわけですから、悪いものを隠そうと思っても隠せない。なので、消費者はちゃんと良いものを間違いなく選べるようになると思います。ごまかしが減って、良いものが残る世の中になる。我々がやっていることは、人々の豊かさに貢献しているものだと思っています。

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