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インボイス制度、開始後も免税事業者の疑念拭えず国が危機感

インボイス制度、開始後も免税事業者の疑念拭えず 国が危機感

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一人親方の登録、道半ば

10月1日からインボイス制度が始まったが、一人親方ら下請けの免税事業者の登録が進んでいない状況だ。労災センター共済会(東京都江東区)が9月に行った調査によれば、一人親方101人のうち、インボイス登録に対して「準備ができていない」が46.6%で、「できている」の37.6%を上回った。

前者の理由として、約4割が「十分に理解していないため、具体的な対応策を練ることができないから」と回答。「仕事が減る可能性がある」といった危機感を抱いている事業者が7割に及ぶ一方、3割が免税事業者のまま様子を見ることも明らかになった。

一人親方の46%が 「準備ができていない」

インボイス制度 円グラフ

※労災センター共済会が2023年9月7日~8日に免税事業者の一人親方を対象に実施した「一人親方のインボイス制度に関する実態調査」より「あなたは、10月1日からのインボイス制度開始に向けて、対応の準備ができていますか。」の問いに対する答え

元請け側が自社負担に

元請け側も対応に追われている。ある工務店は一人親方に対して、税理士から個別に説明をしてもらい登録を促している状況だ。「強制はできませんので、時間をかけて説明していくしかありません」と担当者は話す。

年商2億円ほどのリフォーム会社の経理担当者は、「困っています」と嘆く。この会社は20人ほどの職人に仕事を依頼しているが、うち登録を行ったのはわずか2割にとどまる。「高齢化によりデジタル対応できない方がほとんど。職人不足のなかで契約を打ち切るわけにもいかない」と同担当者。当面は、自社で負担する意向だ。

政府も問題を認識

インボイス制度の開始にあたり、政府は登録申請件数を公表した。9月15日時点で約403万件の事業者が登録。課税事業者(300万者)の約97%、 免税事業者の111万者が申請を終えた。「制度開始時からの登録を希望されると当初見込んでいた分を超えて申請が行われている」と、鈴木俊一財務大臣は9月29日に行われた「第1回インボイス制度円滑実施推進に関する関係閣僚会議」の場で、手応えを口にした。

一方、同会議では、中小事業者への不安を払拭しきれていない、という課題が浮き彫りになった。「いまだ制度導入に対するさまざまなご不安・ご懸念を抱えている事業者の方々も少なからずいらっしゃると考えている」と酒井庸行経済産業副大臣は危機感を露わにした。

ミスターデイク 政府は「インボイス制度円滑実施推進に関する関係閣僚会議」を開催

政府は「インボイス制度円滑実施推進に関する関係閣僚会議」を開催。制度の円滑な導入・定着に向けた取組について議論を交わした ©首相官邸ホームページ

先の会議では斉藤鉄夫国土交通大臣は次のように言及した。「新制度に対応できないことを理由に、特に高齢化が進む、いわゆる一人親方などが廃業を考えることがあってはならない。(中略)制度の円滑な定着に向けて、引き続き、関係省庁や関係団体と連携しながら丁寧に対応していきたい」

公正取引委員会の古谷一委員長は10月4日の定例会見で、独占禁止法・下請法に関する相談が過去2年で約3000件寄せられ、増加傾向にあると明かした。内容は例えば、免税事業者(下請け側)が、課税事業者(元請け側)から自社では消費税相当額を負担しないと一方的に通知されたことなどがある。同委員会では、こうした事例に対して直近で36件の注意を行ったことを発表した。この数字も7月時点から倍増している。

建設業においても「同業者では実際に、下請け側に取引を停止すると宣言してトラブルになったと聞いています」と、先の工務店の担当者は話す。制度開始後も、しばらくは火種がくすぶりそうだ。

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