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溺死は屋内事故が多い?!~断熱が身体に及ぼす影響~

溺死は屋内事故が多い?! ~断熱が身体に及ぼす影響~

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省エネと健康、エコに注目して推進されてきた断熱だが、効果が疑問視されることも多い健康への影響を取り上げる。ここ数年の研究で劇的な調査成果が上げられ、想像以上に健康に影響があることがわかってきた。

寒さが死亡率を上げる

断熱すれば健康に良いことを明らかにする前に、寒さが健康に「悪い」ことを確認してみよう。まず、季節による死亡率の変化を見る。

新生物(悪性腫瘍)を除いて、明らかに寒い季節に死亡率が高くなる
新生物(悪性腫瘍)を除いて、明らかに寒い季節に死亡率が高くなる
※羽山広文『北海道夕張市と福井市における住宅の省エネルギー性能と健康に関する調査報告』(2012年5月23日)より

図1は、疾病ごとの死亡率の月ごとの変化を表したものだ。11月から3月までの寒さが厳しい時期になると、明らかに心疾患、脳血管疾患による死亡率が上がる。特に心疾患の上昇率が激しい。心疾患は狭心症や心筋梗塞、心不全など心臓病全般を指し、脳血管疾患は脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血など血管障害を原因とする脳の病気を指すが、ともに急激な血圧変化が危険因子とされており、温度変化と密接に関係がある。いわゆるヒートショックだ。

「不慮の溺死・溺水」のほとんどが屋内、つまり浴室
「不慮の溺死・溺水」は、海や川などの屋外のものも含むが、特に寒い時期はほとんどが屋内、つまり浴室のものだ。
※羽山広文、菊田弘輝『安全で快適な住まい』日本雪工学会誌 vol.28 No.1(106)2012.1

これは家庭内事故の統計で見ても同じ傾向を指し示している。屋外での不慮の事故を対象にした死亡率の推移(図2)を見ると、溺死・溺水については、そのほとんどが家庭内の浴室での事故死である。

これで見ても同じように寒い季節に死亡率が格段に上がっている。この「溺死・溺水」は、ヒートショックによる脳血管疾患、心疾患によって引き起こされているものが多いという。統計上、平成22年の溺死・溺水の死者は8200人いたが、ヒートショックを原因とする疾病による入浴中の死者は1万4000人以上、という分析もある。

寒さの異なる地域で死亡率の統計を取ったデータ(図3)を見ても、平均気温の低い方が死亡率が高いことを示しており、どの疾病でも同様の傾向になっている。意外なのは北海道の死亡率の低さだが、北海道は室内の気温差が少なく断熱化率が高いからだ。
寒さは死亡率を高めることがこれらのデータに表れている。

各点が各県の該当疾病を示す
各点が各県の該当疾病を示す。各疾患を横断するように引かれた線は、傾向平均を示す。ここでは悪性新生物(悪性腫瘍)も寒い方が死亡率が高いが、食生活などの他の外部要因が原因とされている。北海道が概して死亡率が低いのは、全室暖房と断熱化が進んでいるためで、温暖な地域ほど寒い部屋で過ごしているという逆転現象が起きていることがわかる。
※林 基哉『外気温の変動と疾病--気温が死亡率に与える影響とその変遷』
日本雪工学会誌 vol.28 No.1(106)2012.1

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