南海トラフ巨大地震
――― あなたを、家族を守る「耐震の家」づくり ―――
220兆円の被害想定
南海トラフ巨大地震に関する有識者会議による最終報告書。地震の発生を予知することが事実上できない上、被害想定は最大で220兆円以上と国の財政が傾きかねない巨大なものとなっている。国民の生命を守る住宅の耐震化率アップは、ますます急務と言える。
南海トラフ巨大地震の対策を検討していた国の有識者会議は5月28日に、地震予知が現状では困難と認めた最終報告書を公表した。広域かつ甚大な人的被害、建物被害、ライフライン、インフラ被害の発生が見込まれ、想定すべき最大クラスの地震・津波により、死者は最大32万3千人、220兆3千億円の経済被害が出ると想定されている。これは国内総生産(GDP)の4割超、東日本大震災の10倍を超える規模となる。
耐震化率1割アップで26万棟の全壊防げる
地震予知が困難である以上、地震に対する備えを行うことで被害を抑えるための取り組みが重要になる。
建物に関しては、95万棟~230万棟の全壊、焼失棟数が予想されている。建物の現状の耐震化率の約8割を約9割まで上げることによって、揺れによる全壊棟数は、約62万7千棟から約36万1千棟に約4割減少すると推計されている。減災の観点からも建物の耐震化率のアップは急務であるといえる。
政府が地震調査研究推進本部のデータを元に公表している、今後30年以内にマグニチュード6以上の海溝型地震が70%以上の確率で発生するとされる地点は、日本海溝、相模トラフ、南海トラフと東北から南海にかけての太平洋岸に集中し、5地点にものぼる。(図1)
阪神大震災での死因は8割が建物の倒壊に起因
阪神・淡路大震災での死亡原因の実に77%を占めるのが「圧死」と「窒息」という建物の倒壊を原因として起きてしまったもの。建物が倒壊しないように十分な耐震化を行っておけば、死者の数は劇的に減らすことができる。これこそが、住まい手の生命を守る住宅の耐震化が急務かつ、重要である理由だ。
大地震が起こる可能性の高い地域はもちろん、日本のどこで大地震が起きてもおかしくない現状と生命を守る建物の重要性を住宅業界のプロが、しっかりと消費者に説明できなければならない。
しかし、ただ恐怖をあおっても意味が無く、またすぐに精密な耐震診断を行うのはハードルが高い。簡易に建物の建築時期と現状のチェックを行うことで、意識喚起に取り組むところからスタートするべきだろう(表2、3)。

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