耐震、免震といった地震対策工法の中で、巨大地震だけでなく、余震にも強いとされる制振工法。地震エネルギーを吸収することで、揺れによる被害を軽減するのが大きな特徴だ。
スチールの大型ダイヤモンドフレームで揺れを最大70%軽減。
建物全体に制振の効果を最大限に活用するには、床面積10~15㎡ごとに1台設置する必要がある
写真提供/アイ・エム・エー
揺れを「エネルギー」とみなす発想
建物に耐震工法を施すのがこれまでの主な地震対策だったが、最近では制振工法の採用も増えている。
制振とは、建物の内部に施工された制振装置によって、振動エネルギーを建物に伝わりにくくするもの。揺れを「エネルギー」とみなし、そのエネルギーを制振装置が吸収することで、地震による衝撃を緩和する。
揺れに合わせて制震材が伸縮
制振装置の代表例といえるのが「制震ダンパー」だ。高減衰ゴムやアクリル樹脂など、伸縮性の高い制振材を使用するものが多い。梁と土台の間に設置するタイプ、壁面に設置するタイプなどがあり、形状も、筋交いとオイルダンパーを組み合わせたもの、仕口に設置するものなどさまざまだ。
制振装置は、木造建築に大きな効果を発揮する。制振ダンパーとダイヤモンド型フレームを組み合わせた制振装置は、地震がきたとき、フレーム結合部の制振ダンパーが揺れをキャッチ。地震エネルギーを熱エネルギーに変えることで、揺れを最大で70%軽減する。
また、仕口に設置するタイプは、小さい揺れのときから震動エネルギーを吸収するため、構造部の損傷を地震初期の段階から防げる。コンパクト形状で、設置箇所を選ばない施工性の高さも特徴だ。
制振ダンパーを設置すると、建物の傾きが約半分になるという実験結果もある
画像提供/オーディーエム
余震による二次災害も軽減
地震では、第一波の大きな揺れだけでなく、何度も襲ってくる余震も心配だ。度重なる揺れによって、徐々に建物の強度が低下するためだ。見えない部分が損傷する場合もある。
その点、制振は揺れを吸収して受け流すため、一回一回の震動が建物に与えるダメージが少ない。室内の揺れも軽減するので、家具倒壊などによる二次災害も軽減できる。
地震で起きた衝撃を熱に変えて吸収する制振装置。地震エネルギーをそのまま建造物へ伝えない
写真提供/千博産業

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