企業が自社でメディアを運営する「オウンドメディア」が、リフォーム業界でも広まりつつある。住宅に関わる役立つ情報、面白い記事で読者を「ファン化」し、最終的に自社の客として受注につなげる。これまで膨大な費用がかかっていたウェブ集客を変えるものとして、注目が高まっている。
eA(イーエ)ではインタビューなど、読み応えある記事も掲載
アクセスは月間10万PV
「ただいま!帰ってきてよかったと思える玄関の作り方」。ウェブマガジン「eA(イーエ)」は、このような思わずクリックしてしまうキャッチーなタイトルの記事を、約600本掲載する。テーマは、「住まいとの新しいつきあい方を考える」。専門家のインタビューや、リノベ事例紹介、住宅や暮らしに関するコラムを、平日はほぼ毎日発信している。2014年9月の開設以来、現在ではアクセス数は月間約10万PVと、住まい関連の情報サイトの中でも、人気のものとなっている。
実はこのサイト、リフォーム会社のリノベる(東京都渋谷区)が運営しているもの。しかし掲載している記事に、自社の宣伝は一切なく、ページ下部にコーポレートサイト(自社の公式サイト)へのリンクがあるだけ。
広報の田尻有賀里さんは、「イーエでは、いかに住まいや住まい方に関する有益な情報を発信するかが重要」と話す。ユーザーはウェブ検索やSNSから同サイトの存在を知り、一見遠回りにも思えるが、狙いは「リノベーションを知らない層との接点をつくる」こと。
リノベーションを検討していないユーザーも、イーエなら目を通す可能性があり、記事を通して、リノベの良さを伝えることができるためだ。
2つのサイト運営で効果倍増
メディアを2つ運営している会社もある。中古住宅のワンストップサービスを提供するひかリノベ(東京都墨田区)は、オウンドメディア「住まいブログ」を運営。さらに、ウェブ上から様々な記事や情報を集めて掲載する、いわゆるキュレーションサイトも「くらしクリップ」という名前で運営する。
「住まいブログ」は、リノベると同様、自社の宣伝はほとんどなく、「団地リノベーションで実現する自分らしい住まい」など、ユーザーに役立つ情報を発信する。
同社では、まず最初に『くらしクリップ』でユーザーを集客。このサイトは一日に100本ほどの記事を発信しており、その中には『住まいブログ』の記事も含まれている。そのため『くらしクリップ』の読者は、ある程度経つと『住まいブログ』の読者にもなり、さらにリンク先にある『社員ブログ』にも目を通す。最終的にリンク先から、コーポレートサイトに行き、問い合わせにつながっている。
通常の方法と比べ非効率とも思えるこの方法。しかし真瀬正義取締役は、「メディアの運営を開始してから、問い合わせ件数が倍増した」と話す。「役に立つ記事で読んで共感してもらえれば、同時に当社への信頼感も増す。これによって、当社のファンになってもらうことが狙い」
背景にウェブ広告の限界
それ以外にも、プロタイムズ・ジャパン、オノヤ、リニューアル仲介などがオウンドメディアの運営を始めた。この流行の背景には、リスティング広告など既存のウェブ宣伝に、多くの企業が限界を感じているという理由がある。
オウンドメディアの利点は、面白い記事を掲載すれば、広告より長いスパンで継続的なアクセスが見込める点。ひかリノベでは「運営費用を含めてこれまでのネット広告より安く済む」と話す。
とは言ってもオウンドメディア運営で重要なのは、いかにオリジナルの面白い記事を書けるかどうか。今、各社の「記事執筆能力」が試されている。
オウンドメディアとは、自社で所有するメディアのこと。ウェブサイトのほか、ニュースレターや会報誌も含まれる。
リスティング広告など掲載費を支払い、自社のサービスを認知させる「ペイドメディア」、SNSなど情報を拡散する「アーンドメディア」の効果をより強化するものとして注目されている。
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