開設2年、延べ2000人が実地研修
職人不足の中でも施工品質をいかにして高めていくか―――。リフォーム、新築を問わず住宅産業が抱える目下最大の課題だ。設備建材施工販売大手のアベルコは2年前、埼玉県川口市に「総合技術研修センター」を開設。以来、延べ2000人に及ぶ実践的な施工力アップトレーニングを実施してきた。
実物大2階建住宅を展示
センターは敷地431坪に、倉庫241坪、研修棟35坪などから構成されており、高さ10メートルの倉庫内には約35坪実物大の2階建て住宅が丸ごと設置されている。
センター建物内には実物大2階建ての住宅が建てられている
常設足場で囲まれた住宅外側では、サイディングやタイル張りの外壁工事の実地研修を行う。一方、内部では、住宅躯体構造や配管、配線などが見られるようになっており、ユニットバス、システムキッチン、床暖房、エアコンなどの設備工事、さらには床壁建具の内装工事も体験できる。同社執行役員の大竹清貴総合技術研修センター所長は次のように語る。
「当社では近年、工務店やリフォーム会社からの仕事が増えています。そのためセンターでは、タイル施工やユニットバスはもちろんのこと、住宅工事の全てが実地研修できるようにしています。別棟では太陽光発電や屋根の工事もできます」
構造、配管、配線のしくみもひと目でわかる
取材当日、研修に来ていたのは設備工事の職人4人。戸建て用ユニットバスの工事を覚えるため、2日間の研修を受けに来たという。「戸建てバスでは窓枠の収まりが難しい。ビス留めの加減を調整しないと、水漏れや枠ゆがみの原因になりかねない」。トレーナーの具体的な指導のもと、組み立てを何度もやりながらコツを覚えて行く。
戸建てユニットバスの窓枠収め方を学ぶ
実地体験から作られた同社オリジナルの工具も
リフォーム会社の技術研修にも
同社は年商約600億円のうち工事が7割を占める。そのため常時300件以上の現場を抱え、1000人近い職人が働いている。その全員が最低でも年1回以上は研修を受けるルールで、さらにトレーナーが施工現場に出向いて抜き打ちでチェックすることも多い。
研修の成果は着実に表れている。同社では年間1万8000件以上のユニットバス工事を行っており、以前は排水溝取り付けの不具合でそのうち15件前後のトラブルが発生していたが、現在は3~4件に減っているという。
「排水溝の締め付け力を規定通りにできるように専用のトルクチェッカーを使用させるようにしました。さらに締め忘れ防止のため、施工時の写真をACEと呼ぶ当社独自の施工管理システムに登録させています。こうした対応策も役立っています」(大竹氏)
リフォーム会社、ハウスメーカーの営業マンや新人研修の場として利用されることも良くある。この日も千葉県のリフォーム会社新人5人が来て、石膏ボード上からの間柱位置を確認するコツなどを教わっていた。
建物構造を学びに来たリフォーム会社の新人社員
今後も研修参加者はますます増えそうだ。
現場での施工や搬入の苦労も体感
住宅は気密、断熱など様々な面で日々進化しています。その結果、工事の段取りが変わったり、以前なら工具が簡単に入った箇所に手も入らず施工に苦労するといったケースもあります。最近は2階にキッチンやバスを設置する家が多いため、階段からの搬入や取り付け時の落下防止安全確保なども重要です。当センターでは、そうした課題を、実地で体験しながら覚えることができます。
(大竹清貴センター所長)

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