「室内空気質」(Indoor Air Quality。IAQともいう)の問題は、1980年代にホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物(VOC)から始まった。VOC対策は今も重要だが、現在、世界的にはカビ・ダニなど、生物由来の汚染物質がクローズアップされている。今回は室内空気質問題のキーポイントを探る。
高気密でVOCが高濃度に
室内空気質、空気環境を良くするリフォームは、家族を様々な疾患、アレルギーから守るものとして、今後ますます注目されるだろう。
その理由の1つは、住宅の気密性が向上していること。古い住宅でも、特に窓で新しい建材を使ってリフォームした場合、気密性は格段に高くなる。室内空気は、人間が摂取する量が最も多いもの。定期的な換気を行わない場合、ホルムアルデヒドをはじめとする揮発性有機化合物(VOC)は高濃度になり危険だ。
2つ目に、「PM2・5」など新たな汚染物質が増えていることだ。原発事故以来、放射性物質も空気質が扱うべき問題になっている。
現在、空気質問題の主なものは次の3点だ。
VOCへの対策としては、住宅性能表示制度で使用建材が規制されている。
一方で、家電やOA機器、パソコンなどの電子ガジェットがVOCを発散することも少しずつ知られるようになった。ものによっては建材のように時間がたっても発散量を減らさないこともある。これには換気が最も有効な手段だ。
カビが中心に
今世界的に問題になっているのがカビの問題だ。カビが健康に与えるリスクが高いことが2011年にWHO(世界保健機関)で報告された(表2)。
カビの何が危険なのか。1つはカビ自体が出す毒素や、カビの胞子が人体に与える影響だ。これは、主にアレルギーの形で人間に害を与える。抵抗力の低い子どもや高齢者では、肺や皮膚にカビが定着する例もある。もう1つはカビがVOCを出すという点。カビは有機物質に付着して繁殖するが、その際にかび臭いにおいの元であるジェオスミンなどのVOCを生産する。
これを微生物由来揮発性有機化合物(MVOC)と呼ぶ。MVOCが表面化してきたのは、住宅の気密性が上がって湿度管理を厳密に行わないと、カビにとって好環境になりやすいということと、カビの抑制作用があったホルムアルデヒドの発散が減ったためだ。
湿度管理が室内空気質問題の鍵に
カビの問題を扱う際に、最近注目されているのが「カビ指数」だ。カビの菌糸が伸びる長さをもとに反応を数値化し、その1週間当たりの量を算出したもので、指数が高いほどカビの繁殖が多くなる。また、カビ指数が高いと、ダニも生息しやすく、ダニアレルゲンの濃度も高くなる(カビとダニの量は比例関係にある)という調査報告もあり、微生物由来の室内空気質問題解決の糸口になるとも考えられる。
カビの抑制に効果的なのは湿度管理だが、躯体内部のカビが問題になるため、具体的な対策は、躯体の断熱性と透湿性を上げて結露を防ぐということになる(図5)。また、カビは相対湿度が50%を切ると菌糸の成長が止まるので、調湿材を使って湿度管理を行うのも効果的だ。
この先、梅雨から夏へと湿度が高くなる季節がやってくる。「カビ」をテーマに空気質の問題を考えるよう、施主にも訴えていこう。

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