べた基礎の普及により、シロアリの被害は少なくなってきたと言われているが、木造住宅を長期的に守るためには、防蟻の施工が必要だ。最近では、より安全性が高く、対応年数の長いホウ酸系防蟻剤が注目を集めている。
広がる生息地域アメリカカンザイシロアリ
木造住宅の劣化の大きな要因は「シロアリ」と「腐朽」となっている。そのため、建築基準法上でも木造住宅では、防蟻または防腐処理を行うことが義務付けられている。

シロアリが侵入してできる蟻道

木材の劣化の様子
春先からシロアリが活発に活動を始めるので、2月~4月にかけて防蟻施工の提案に力を入れるリフォーム会社が多い。
最近の住宅ではべた基礎が一般化し、基礎のコンクリートがあるため、シロアリ被害は少なくなったと言われるが、温暖化の影響で、基礎以外から飛来して侵入する「アメリカカンザイシロアリ」などの生息地域が広がっているので、しっかりとした対策をする必要がある。
自然素材「ホウ酸」安全性の高い薬剤
日本の住宅の防蟻処理では、一般的に農薬系の薬剤が使われている。薬剤の効果は5年で、定期的な施工が必須となっている。その他、シロアリの侵入経路を塞ぐガラス粒剤や金属メッシュを使用した工法、農薬系以外の自然由来の素材を使用した防蟻方法がある。
最近では特に、自然素材「ホウ酸」を利用した防蟻剤が人気を集めている。以前は公的な認定がなかったが、2011年9月に、ホウ酸塩を主原料とする木材保存剤が日本木材保存協会の認定を受けた。

ホウ酸系防蟻剤の施工の様子(写真提供:日本ボレイト)
これにより、長期優良住宅認定制度や、住宅性能表示制度における劣化等級3に対応する防蟻処理材として利用できるようになった。
ペットや子供のいる家も安心・効果持続
ホウ酸は、主に米・カリフォルニア州や西トルコの鉱脈で採掘される「ホウ酸塩鉱物」を精製して作られる。
ホウ酸は鉱脈のほかにも、海水、淡水、岩石、すべての植物、土壌に存在する自然素材。安定した無機物なので、分解されず、揮発・蒸発することがないため、長期的な防蟻効果が期待できる。ホウ酸は植物にも含まれており、人間が日常的に摂取している物質。哺乳類は必要以上に摂取した場合でも、腎臓の浄化作用により体外に排出される。
これに対しシロアリなどの虫には腎臓がないため、一定量のホウ酸が蓄積されると代謝が阻害されて、結果駆除ができる。
アメリカなどでは、農薬系よりもホウ酸系の防蟻処理が一般的になっている。安全性が高いので、住みながら小屋裏から壁内、床下まで家全体を安心して施工ができるということで、ペットや小さい子供のいる家でも利用者が増えつつある。

ホウ酸系は水に弱いので注意。また、非忌避性、遅効性でもあることを考えて使用する必要がある。
ホウ酸系防蟻剤主なメーカー
- エコパウダー
- 大日本木材防腐
- 日本ボレイト

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