毎年6月は、世界中でLGBTQ+の権利を啓発する「プライド月間」だ。リフォーム業界ではSDGsに取り組む企業が増えている。目標5「ジェンダー平等を実現しよう」にある通り、リフォーム業界も率先して貢献していく必要がある。
そこで本紙でもTRP2023に出展した「ゼロリノベ」を手掛けるgroove agent(東京都港区)を紹介。またプライド月間の始まり、レインボーの意味を解説する。
ゼロリノベ、TRPに出展
世界では6月にイベントが開かれる。日本でも6月にさまざまな企業がキャンペーンや啓発活動、レインボーグッズの販売を行う。大規模なイベントとして、国内では毎年4月末から5月上旬にかけて特定非営利活動法人東京レインボープライド(東京都新宿区)が主催する「東京レインボープライド(TRP)」が知られている。
当日のブースの様子。通りがかる来場者に「住まいの参考にぜひ」と声掛けすると、多くの人が笑顔で受け取ってくれた
今年は4月22日、23日に開催された。リフォーム業界から唯一ブースを出展したのは「ゼロリノベ」を手掛けるgroove agentだ。同社は以前から同性カップルをサポートしてきた。SDGsへの取り組みとして、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」も掲げている。
ブース内では、ソファやコーヒーテーブル、観葉植物を置いてリビング空間を演出。さまざまな企業が出展する中、わかりやすく「住まい」をアピールした。
外には事例を貼った看板を出した。同性カップルやDINKs世帯の事例をはじめ、車椅子ユーザーである施主のバリアフリーな住まい、デザイナーズ家具を主役にした一人暮らし、ペットとの生活など、多様な事例を紹介した。
「住む人が違うとその人が大切にするものも全く違う。それが居心地よさになることを視覚的に感じていただきたかった」とマーケティング部の羽田真那部長は話す。
パンフレットもTRP用に用意した。初日に300部用意していたパンフレットは、1日目でほとんど配り終えてしまうほど盛況だった。2日目の朝に追加で印刷し、両日で420部配布した。
友人グループ、カップル、学生から高齢者まで、さまざまな来場者がブースに声をかけてくれたり、相談に訪れた。
当日配布したパンフレット
「みなさんが気軽に挨拶してくれて、コミュニケーションがスムーズな空間。改めてリアルイベントの良さを感じました。住宅のイベントではないので、住まいに興味がなかった人と話せるのもよかったです。リノベーションの選択肢自体、増えてきたとはいえまだまだメジャーじゃない。来てくれた方は、こんな選択肢もあるんだ、ここまでできるんだ、とすごく話を聞いてくださった」(羽田部長)
今年は手探りでの初出展だったが、「来年もぜひ出展したい」と羽田部長は話す。
「物件選びも間取りも、同性カップルだからこう、とか全然ないんです。でも住宅ローンを組むのに書類作成が大変だったり、パートナーが亡くなったときの相続問題など、さまざまな壁があります。今後も丁寧にサポートして、私たちが掲げる『大人を自由にする住まい』を実現していきたい」(羽田部長)
マーケティング部
羽田真那部長
全てのジェンダー平等に向けて
プライド月間のはじまり
現在のレインボーフラッグは6色
原点は、諸説あるが「ストーンウォールの反乱」が語られることが多い。
60年代のアメリカでは多くの州で「自然に反する」と見なされた性行動を違法とする法律が残っており、同性愛者に酒類を提供することも違法とされた。そのため多くのゲイバーやナイトクラブで警察の手入れが起きていた。
1969年6月28日未明、アメリカ・ニューヨークにあったゲイバー「ストーンウォール・イン」にも、警察が介入しようとしていた。
しかし店内にいた200人あまりの客が抵抗、反発は600人の群衆と警察との暴動に発展した。
この事件をきっかけに、アメリカ全州でゲイ、レズビアンの保護を求める運動が起きた。この動きは他国のセクシュアルマイノリティの権利獲得運動にも大きな影響を与えていく。
1970年6月、反乱から1周年を記念してニューヨークで初のプライド・パレードが開催され、以降6月は世界中の性的少数者たちにとって重要な意味を持つようになった。
なぜレインボーなのか
「多様性」のイメージやプライド・パレードなどで目にする虹色。最初に考案したのはアーティストの故・ギルバート・ベイカー氏。1978年6月にアメリカ・サンフランシスコで開かれた「ゲイ・フリーダム・デイ・パレード」で、8色のレインボーフラッグがはじめて使われた。
それから40年以上、レインボーの旗はLGBTQ+の尊厳と社会運動のシンボルとして使われてきた。運動が広がるにつれ、より簡単にたくさんの旗が作れるように色が減ったとされ、現在では赤、オレンジ、黄、緑、青、紫の6色が一般的になった。
6月で終わらないプライド
性的少数者(LGBTQ+)は人口の約10%と言われており、その割合は左利きや血液型のAB型と同程度。しかしセクシュアルマイノリティたちの存在は、これまで可視化されてこなかった。
例えば物件を販売する際に対象とする「ファミリー」という言葉の意味には、どれだけ彼らの存在が含まれてきただろうか。社員との雑談で何気なく言ったつもりの冗談に、彼らを傷つける表現はなかっただろうか。そのようにして性的少数者(LGBTQ+)たちは、日常生活において少しずつ「見えない」ことにされてきたのだ。
企業が多様性を尊重し、考慮してマーケティングに活かすことを「インクルーシブマーケティング」という。インクルーシブマーケティングは、マイノリティとされる人たちが、自分たちはその企業のサービス対象に含まれているのだと思えたり、企業の立ち位置を明確にすることで会社そのものを知ってもらうきっかけになる。採用活動にも影響を及ぼす。
しかしながらセクシュアルマイノリティについて学び慎重にキャンペーンや活動を行わなければ、当事者たちを傷つけたり、企業の信頼を失うリスクもある。
プライド月間である6月は、彼らのコミュニティをエンパワーメントするための重要な機会だ。顧客に限らず、自社内や関係会社にも当事者たちがいるかもしれないと想像し、全ての人にとって「良い」業界にしていくためのきっかけとしていく必要がある。そして7月以降も、彼らの存在を決して忘れてはならない。学び続ける姿勢が必要とされている。
(リポート/編集部 芝 郁美)
この記事の関連キーワード : groove agent LGBTQ+ セクシュアルマイノリティ

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