"お客自体が来なかった"の厳しい声も
消費増税のあった4月以降、リフォーム市場はどう推移しているか。各社のヒアリングを総合すると、4月は受注ベースで前年同月比約20%減、5月は回復傾向から10~15%減となったもようだ。引き合いベースでは「5月4週からはほぼ通常に近づいている」と実感する社も多く、6月には完全復活のシナリオが描けそうだ。
落ち込みは「想定内」むしろ早期回復?
今回の消費増税前後の市場の動き、または自社の業績については「ほぼ予想通りだった」とする社が大半で、"予想以上の落ち込みに大慌てで緊急対策を講じた"というような声は聞かれなかった。むしろ、「ゴールデンウィーク明けの週から回復してきて、予想より1、2週間早い」(静岡県・A社)「5月10、11日の自社イベントには通常よりかなり多くの来場があり安心した」(岡山県・カスケホーム)といった感想が寄せられた。
関東を中心に26店舗を展開するフレッシュハウスでも「大きな流れとしてリフォーム市場にベクトルが向く今、消費税の影響は一過性のものだと考え、見立て通りの結果が出ている」(舟久保久リフォーム本部本部長)と話している。同社では4月に1割以上落ち込んだが、5月は前年並みか若干プラスまで戻している。
フレッシュハウス全店では6月まで「下取り値引きキャンペーン」を開催し、増税後のリフォームニーズを促す
一方、想定内といえども厳しい状況が繰り広げられたことも事実。
「4月の新規案件はほぼゼロだった」(奈良・ジェイマップス)、「昨年4月には7000万円の受注があったが、今年はその半分以下。毎年恒例で3月末から4月頭に行う地元最大級の自社イベントも昨年は2億4000万円の売り上げがあったが、今年は5000万円と大きく落ち込んだ。どこの店もそうだったが、お客自体が来なかった」(北海道・トマト)。
増税後対策は各社さまざま
6月以降、割と早い段階で増税前のボリュームに戻るという流れだが、数字上ではそうはいかないところもある。
ナサホームでは「昨年は6月以降、明らかに駆け込み需要の跳ね上がりがあった。新規出店の上乗せ分が8%としても、6月は65%増、8月55%増、9月も58%増とかなりの伸び。これをクリアしてくのは難しいだろう」(江川貴志社長)。
増税後対策としての各社取り組みでは、「3%還元セール」をはじめ、「OB客フォローのさらなる強化」「4月にやめていたチラシの再開」「チラシに各種補助金の案内を入れる」など各社がさまざまな工夫を凝らしている。増税に的を絞ったものではなく、広義的な販売促進策であるものが多い。
増税前から〝4月以降も据え置き価格〟をチラシにうたっていたゆとりフォームの大澤洋昭社長は「増税後の集客効果を期待したというよりは、2月の段階で3月末の引き渡しは無理と考えた結果の策だった」と振り返り、今後の対策として「少ない引き合いの中でいかに成約を取っていくかに尽きる」と話している。
「営繕ニーズは前・後倒し起きにくい。
一方、贅沢ニーズは一時的に減退」
≪ホームプロ≫
優良リフォーム会社紹介サイト。2001年にサービスを開始、現在約800社のリフォーム業者が加盟。40万人以上の利用実績がある
4月は消費増税影響の見極めを行うため、プロモーション費用も昨年に対して4月は70%、5月は85%しか使いませんでした。増税後の状況としては、サイトのCVR(コンバージョンレート・紹介依頼申込者/サイトの訪問者)が昨年と比較し10~15%程度悪化しているため、お客様の動きは悪くなっていると捉えています。
一方で、依頼案件の単価は4月よりも前の2月の時点で、駆け込みに間に合わないと気付いた、とくに高額リフォーム帯でのニーズが減退し、4月以降もその傾向が続いています。 営繕や修繕のニーズは実需のマーケットであり、「前倒し」というのは起きにくく、また逆に消費税が上がったからといって「後ろ倒し」も起きにくいと考えます。
一方で、高額の「贅沢ニーズ」は一時的に減退しており、そのため、総件数はさほど減ってはいないが、受注金額は減少している状態。ただこの影響も一時的で、第2四半期には徐々に戻ると考えています。
当社では高額層向けのコンテンツを強化していき、需要喚起を図っていきます。
ホームプロの増税前後の動向
≪リフォーム有力店の声≫
「価格据え置き」チラシを作成
ゆとりフォーム(東京都)
4月の新規の引き合いは前年同月比30%減。5月は15~20%減で推移しており、想定内の結果だ。5月20日を過ぎてかなり回復基調にあり、まだ読めない部分はあるものの、6月以降は引き合いに関していえば通常に戻るとみている。
昨年10月以降の駆け込み需要は前年同期比で30%増程度あった。当社では集客チラシが売り上げの半分程度を占めるが、増税前は通常通りにチラシを入れると忙しすぎて営業が動けず、OB客にも迷惑がかかるため、部数を2割程度減らして対応した。
また、今年2月の段階で、3月末までの引き渡しは無理だと考え、「4月以降も価格据え置き」のチラシを作成した。お客様の対応は、「それならば4月以降にゆっくりやろう」という方と、「それでもすぐにやりたい」という方と2通りに分かれた。
増税後の対策に限らず、今後はまずOB客にしっかり対応すること。定期訪問を行い、種まきを怠らないことが大事。また、少ない引き合いの中でいかに確実に成約までもっていくか。これには当社がもともとやっているスピード対応や顧客満足をさらに充実させる他にない。
駆け込み需要増で、6月以降前年クリア難しい
ナサホーム(大阪府)
受注ベースでいうと、4月は前年同月比で24%減となったが、5月は10%減まで戻ってきている。チラシの反響は通常の6割くらいと悪いが、少ない案件の中で契約はけっこう取れている。
6月以降は増税後の落ち込みからはかなり回復するだろうが、昨対比で見た場合には、昨年6月から駆け込み需要でグッと伸びてきているので、前年並みまで持ち直すのは難しいだろう。
増税前の駆け込み需要は、新規出店の上乗せ分が8%乗ったとしても昨年6月65%増、7月20%増、8月55%増、9月58%増と相当あった。予想通りの動きだったのでとくに増税後対策はとっていない。
潮流はリフォームに落ち込み一過性のもの
フレッシュハウス(神奈川県)
消費税増税による落ち込みも4月中旬までで、5月はすでに回復している。大きな流れとして、リフォーム市場にベクトルが向かうなか、消費税の影響は一過性のものだという筋書き通りだ。
売上高ベースで4月は10%程度の落ち込みだったが、5月は前年並みかややプラスで推移している。ポータルサイト媒体からの紹介案件も4月は10%以上減少したが、契約に関しては前月の見積もりが受注にこぎつけたためプラスとなった。むしろ5月には、4月の案件減少を受けてマイナスとなるかもしれない。
5月ゴールデンウイークに各店舗でイベントを開催し、集客数は全体的には1割強減ったが、新規客が15%増えているので心配はしていない。
消費マインドが落ち込んだわけではない
コニージャパン(大阪府)
増改築や高価格帯のリフォームを扱うスペースアップでは、イベントの集客数が4月以降もほとんど落ち込まず、引き合いも変わらずあった。ただ契約に関してはお客様のほうでも急いでおらず、これからだ。
一方、水回り小工事を主体としたリフォーるでは4月はチラシの反応すらなくなり、イベントもゴールデンウイーク中は不調に終わった。ただその後の17、18日には反動もあったのか、とても多くの来場があり、5月下旬には完全に復調したとみている。
価格訴求に反応する顧客はすでに駆け込みで消費しているから、4月の落ち込みは駆け込み購買を終えた消費者の影響で、消費マインドが落ち込んでいるわけではない。
4月は3%還元を打ち出したが、商談の上での武器とはなったものの、反応自体はほとんどなかった。これからは価格訴求だけでは無理で、トイレを単体で売るにしてもその価値をしっかり伝えていく方針でやっていく。
「中古注文住宅」のチラシを全国紙で展開
山商リフォームサービス(東京都)
4月以降、当社の集客の主力であるリフォームポータルサイトからの紹介案件は、3月までと比べて2割程度落ちている。ただ、今まで100あった紹介案件が80に減ったところで、当社が今まで通り30取れば売り上げ的には落ち込まない。そのためのブランディング強化に努めている。
5月下旬の読売新聞に全5段の広告を入れたほか、ビジネス誌にも広告を掲載。「中古注文住宅」(同社の商標登録済 中古物件購入×リフォームのこと)」を訴求していく。
チラシ広告からの契約受注は当社の場合には全体の1割に満たないが、3月下旬に入れたチラシの反響は昨年8~9月から5分の1程度に落ち込んだ。そのため、4月はチラシを打たなかった。5月下旬から再開するが、以前は問い合わせがほとんどなかった300万円位の高額リフォームがぼつぼつとれるようになったため、この5月下旬の広告には表面の4分の1を使って、ビフォーアフターで案内する。
5月イベントに予想上回る来場
安藤嘉助商店(岡山県)
5月10、11日に自社で行った「春の蔵まつり」には予想をかなり上回る220組の来場があった。通常は150組程度だから、むしろ多かった。リフォームの相談も多く、37組が現地調査まで進み、ほっとしている。
この記事の関連キーワード : OB rifo-mu ゆとりフォーム コニージャパン ジェイマップス チラシ トマト ナサホーム フレッシュハウス リフォーム 中古 下取 中古住宅 増税 安藤嘉助商店 山商リフォームサービス 消費税 需要 駆け込み

最新記事
この記事を読んだ方へのおすすめ
-
WEB限定記事(2025/07/03更新)
-
1654号(2025/06/23発行)25面
-
1654号(2025/06/23発行)31面
-
1654号(2025/06/23発行)21面
-
1654号(2025/06/23発行)21面