典型的な労働集約型産業とされるリフォーム事業において、業務のアウトソーシングは経営の効率化に非常に有効な手段だといえる。中でも、労働コストの低い海外への業務アウトソーシングはここ数年大企業にとっては当たり前になってきている。住宅業界での海外アウトソーシングの今とこれからを取材した。
変わりつつある海外への外注メリット
リフォーム会社の業務は集客から営業、工事監理、アフターメンテナンスまで非常に多岐にわたるのが特徴で、そのいずれも非常に人の手が掛かる。より社内の業務を効率的にしたいと考えた際に有効なのが業務アウトソーシングだ。社外に出せる仕事は出し、社内でしかできない業務に労働力を集中させることで社内の労働環境の改善にもつながる。
パースや図面の作成といったコンピュータの専門知識と時間が必要な作業をアウトソーシングすれば、集客や営業により経営資源を集中できる。近年、特に注目を集めているのが、中国や東南アジアといった人件費の安い国へのアウトソーシングだ。だが、コスト重視の傾向は薄れつつあるという。
ベトナムでCADセンターを運営するDTS 産業公共営業統括部 蛭田直樹部長は「中国などでは国の発展とともに人件費が上昇していますし、円安傾向が続いているので、以前のようにとにかく低コストとは単純に言えなくなってきている。コストを感覚的にあらわすと日本を10とすると、中国は8 、東南アジアで6といったところ」と語る。
日本で業務を外注するよりは低コストで済むが、より重要になっているのは品質と納期の短縮だという。パースや図面作成に専門的に従事する海外スタッフは技術の熟練度も高く、社内で作成するパースよりも数段上の品質を実現する。また、納期に関しても海外工場の熟練度があがっていることで以前に比べて短縮している。単純なパースであれば翌日に納品できるケースがほとんどだという。

中国のパートナー企業の執務室(写真提供:日本ユニシス・エクセリューションズ)
経理業務なども海外外注でスリムに
リフォーム会社や工務店が外注できる業務の幅も広がりつつある。これまでの主流は上に挙げたパースや図面の作成といった業務だが、経理や勤怠管理などの業務の外注にも対応を始めている企業が増えている。これらの業務に付随する大量のデータの入力は、住宅会社では必ず発生する業務でアウトソーシングの効果も高い。
また、安定して長期間にわたり大量の発注がなければ、そもそも外注に応じてもらえなかったため、大手ハウスメーカーなどの大企業しか利用できなかったこれらのサービスだが、小ロットでの発注もこれから可能になる傾向にあるという。
「これまでは大手やある程度規模が大きい企業が海外アウトソーシングを主に活用して業務効率化を行ってきました。ただ、労働力と資本の小さい企業こそ、本当は効果がある。完全に小口の発注にはまだ対応できませんが、住宅業界のフランチャイズ本部や団体、協会などが中小企業を取りまとめてサービス提供できるようにするケースはこれから増えると考えています」(日本ユニシス・エクセリューションズ アドバンストビジネス事業部 安川友規氏)
日本ユニシス・エクセリューションズでは、住宅会社向けのデータポータルサービス「uSmaju(ユースマージュ)」も昨年末に開始。これは住宅業界に特化したネット上にあるデータの倉庫のようなもので、海外で作った図面やパースデータをここに納品することで、社内や協力業者と瞬時に共有できる。
社内で行う業務をスリム化できる海外アウトソーシングの中小企業での活用はこれから活発になっていくことが見込まれる。自社に合った業務の外注を今から検討しておきたい。

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