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「特定空き家」対策では間に合わない

「特定空き家」対策では間に合わない

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 3月に公表された「平成27年地価公示」では、住宅地全国平均は依然として下落しているものの、商業地の全国平均が7年ぶりに下落から横ばいに転換しました。



不動産コンサルタント 長嶋修氏不動産コンサルタント 長嶋 修氏

不動産デベロッパーで幅広く不動産販売業務全般を経験後、1999年に業界初の個人向けコンサルティング会社である、不動産の達人さくら事務所を設立、現会長。国土交通省・経済産業省などの委員を歴任。

 アベノミクス、東京オリンピック開催期待で、三大都市圏とりわけ都心部は大きく息を吹き返しました。一方、地方圏では、下落傾向は変わらず、昨年と同様のトレンド継続が確認されています。主にそうした地域でいま、大きな課題として浮上しているのが「空き家問題」です。

 今年2月に施行された「空き家等対策の推進に関する特別措置法」。防犯・景観などの観点から認定された「特定空き家」について、固定資産台帳を参照して所有者名義を簡単に特定できるようにしたり、立ち入り調査も行えるほか、修繕や撤去を命令、さらに強制代執行で建物を解体、その費用を所有者に請求できるようになりました。税制改正では、空き家の放置による固定資産税の軽減措置も見直されます。

 総務省を中心にして5年ごとに作成されている産業関連表によれば、わが国では新築住宅建設は2倍以上の生産誘発効果(経済波及効果)があるとされています。3000万円の注文住宅を一つ建設し売ることができれば、資材や設備等の発注、職人さんなど関係者の給与、そしてそれらが消費にまわるなどして、全体としておよそ6000万円の経済波及効果があるというわけです。したがって、常に景気浮揚策のトップに挙げられ、実行されてきたのが新築住宅建設・販売促進策なのです。

中古住宅の資産価値

 人口減少・世帯数減少の局面では、新築が一つ建てられれば、その分以上の空き家が発生します。この空き家が放置されれば、倒壊や犯罪の温床となるリスクが生まれ、景観として町の価値を毀損します。こうした外部不経済を差し引いたら、その経済波及効果はいかほどでしょうか。

 他先進国と違って日本の中古住宅市場は唯一、逆資産効果が働く市場のままです。実際、住宅ローンを借りてマイホームを買った世帯の多くが、住宅ローンの残債額が住宅の価値を上回る「家計内債務超過」を抱えています。20~25年で建物の価値がゼロになるといった中古住宅市場は日本だけです。ここを改善できれば、日本の中古住宅流通は現在の50万戸程度から4~5倍の200~250万戸程度に伸長しても全くおかしくありません。新築住宅建設を抑制しながらも、中古住宅市場・リフォーム市場を活性化させ資産効果を働かせる、といった施策が必要です。

 不動産、建築、金融、国交省等、関係者が一堂に会し、中古住宅・リフォーム市場活性化に向けた基本的方向や取り組み課題をタイムリーに共有する「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル報告書」が公開されています。こちらをよくお読みになると、現在の中古住宅市場の課題や解決策のヒントがご理解いただけるかと思います。

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