OKUTA(埼玉県さいたま市)は、農作業を通じて人を育てるというユニークな取り組みを行っている。名称は「OKUTA LOHAS College」。これは、自然素材を使い、自然の力を活用したパッシブデザインを売りにしている会社として、社員1人1人に自然を体感し、理解してもらうことを目的としている。
一列に並んで田植え
「光や風といった自然の力、自然素材を生み出すのに要する労力、そして、その価値を体で感じてもらうための研修です」(山本拓己社長)
研修を通じて、「会社の本気度を感じた」、「会社の姿勢に誇りを持てるようになった」といった声があり、社員のモチベーションも高まる効果が出ている。
研修は1年で「田植え」、「草取り」、「稲刈り」の3回行う。舞台となるのは、すべての農家で有機農業に取り組んでいる埼玉県小川町下里地区。各回は、座学、昼食、現場研修の3部構成となっている。
午前中に行われる座学では、コナギ等の雑草と稲の見分け方など農業に必要な知識を身に付ける。目印がついた紐を使用して、苗を等間隔で植える練習も実施。その他にも、田んぼに住む生き物をテーマした生物多様性についての講義などが行われることもあり、地球環境についても学ぶ。講師となるのは、下里地区の農家の方や大学教員ら。
夏の草取りの様子
共通体験、結束深める
昼食では下里地区で採れた有機野菜や米を味わう。昔ながらの釜と薪を使っての炊飯を、研修生が行う回もある。研修生からは、「野菜が甘い」、「こんなに野菜の味が濃いなんて」といった驚きの声があがった。
午後からは田んぼでの実地研修。参加者が横一列に並んでの田植え、稲の生育を邪魔する雑草を取り除く草取り、稲刈りといった農作業を体験。稲刈りでは、刈り取った稲の水分を抜くための「はさがけ」まで行う。この他に、ゲンゴロウやアメンボなど、田んぼの生き物調査を行うこともある。
「全社員が共通の体験を持つことで、結束が深まります。さらに、街中から離れ、自然の中で1日過ごすことで、心身ともにリフレッシュすることもできます」(山本社長)
2010年の開始時は任意参加だったが、12年からは全社員の必須カリキュラムとした。毎回70人ほどが参加する。一部の例外を除き、全社員250人のほとんどが参加済み。15年度の新卒社員17人も6月から行われる研修に参加する予定。同社では、この他にも間伐体験を研修に取り入れている。
稲刈り後の集合写真
有機米の全量買い取り
2009年からOKUTAは、下里地区で採れた米を全量買い取る契約を結んでいる。多い時には5tを超える米を、福利厚生の一部として希望する社員へ宅配する他、協力業者や会員へのサービスに活用している。
同地区で約40年有機農業に取り組んでいる金子美登氏に説明を受けている中で、買い手が付きにくい米1.8tが余っていることを知り、その米を買い取ることを決めたことがきっかけ。

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