解消されぬ人手不足が復興を足止め...
発注しても2~3カ月待ちは当たり前
被災1年が経っても損壊した住まいのリフォームはほとんど手つかず状態
東日本大震災から間もなく1年が経とうとしている。だが、原発問題、ガレキ処理問題が叫ばれるばかりで、復興の足音はあまり聞こえてこない。被災者の生活は改善しているのか?本紙取材班は、ようやく「復興庁」が発足した震災11カ月目の被災地を訪れた。

▲浸水した1階部分にブルーシートを張って応急処置をしたまま、その後、改修がストップした家は無数にある(石巻市、2月13日撮影)
建設労働者の賃金 相場は倍近くに上昇
死者1万5852人、行方不明者3287人----東日本大震災から346日目の2月21日、警察庁はこのように発表した。「復興庁」が発足した、11日後のことだ。生きているのか、死んでいるのかわからない人が、まだ3000人以上もいる。この数字が、震災から1年が過ぎようとしている被災地の現状を端的に表している。
肝心の復興作業は遅々として進んでいない。
「仕事はいくらでもあるのに、人手が全然足りない。宮城県内の相場でいえば、建設労働者の日当は高いところでは2万円を超える。震災前と比較すると、倍までいかなくても、かなり値上がりしている。それでも人が集まらない」
建材販売会社「千葉誠」(宮城県気仙沼市)の佐藤慎一取締役が話すように圧倒的な人手不足が復興を遅らせているのだ。石巻市建設総合組合を訪れていた工務店経営者もこう語る。
「人手が足らないから、発注があっても2カ月は待ってもらっている。当然、自分の家の改修は後回し。少なくとも、あと2、3カ月は手がつけられない」

▲床下の泥出しだけは出来たが今もこの状態のまま(気仙沼市、2月14日撮影)
復興計画が未確定 建て直してもいいのか
人手不足に加えて、もう1つ、復興を遅らせている理由がある。
仙石線石巻駅から石巻街道を越え、石巻湾に向かって車を走らせると、目の前に広がるのは、だだっ広い荒れ地ばかり。ガレキの撤去は着々と進んでいるが、新たな住宅が建てられる気配がないことは一目でわかる。
「復興計画がはっきりしないから、建て直していいのかもわからない。新しく作る幹線道路とぶつかっちゃうかもしれないし......」
石巻市内でボランティア団体が運営している無料カフェ「街の駅おちゃこ」を訪れていた被災者の言葉だ。石巻湾から1kmほど内陸にあった自宅は津波で半壊。しかし、新たに敷設予定の幹線道路が通る計画地域にあるために、手つかずのまま放置してあるのだ。
震災のショックで精神科通院者は3倍に
おのずと被災者の住まいは不慣れなプレハブ仮設住宅や市の借り上げ仮設住宅となる。ここでもトラブルが相次いで発生しているという。特大寒波の影響で水道管が凍結するケースもあれば、断熱効果の乏しい住宅で凍えながら夜を過ごしている被災も少なくない。
「同じ町内会で同じ仮設団地に移住できた人はいいのですが、桃生の仮設団地のように、まったく知らない人同士が同じエリアに住んでいると交流できずに、引きこもってしまう人もいます。"見守り隊"というボランティアの方が訪問しても、外に出てこない。家族、家、仕事を全部失った方の傷は癒えていないのです」(いしのまき環境ネット理事兼事務局の川村久美さん)
実は、震災のショックと不慣れな生活もあって、震災以降、病院の精神科に通院する人は3倍にも膨れ上がっているという。精神を病んで自殺した医師もいた。被災者のメンタルケアをこなす人材も圧倒的に不足している状況なのだ。
被災地の今(1)解消されぬ人手不足が復興を足止め...
被災地の今(2)復興作業員以外に人がいない南三陸町
被災地の今(3)伝統工法の家は大津波でも残った
被災地の今(4)石巻に大工6人を派遣、気仙沼にワゴン車2台寄付

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