米国が住宅マーケットによって消費経済を支えていることはよく知られているが、同時に「住宅リフォーム先進国」であることは意外に知られていない。その市場規模は340ビリオンドル、日本円にすると実に40兆円の巨大産業だ。2008年のリーマンショックによるリセッション後、新築市場同様に一時停滞気味だったこの市場も、ここ数年は力強く復活しつつある。最新のマーケットの現状をリポートする。
―――取材・文 本紙社長:加覧光次郎

ドア取り付け工事のデモは観客でいっぱいに
「機能アップ」「性能アップ」施工実演に見入るプロたち
オレゴン州のポートランドは、合衆国の中でも豊かな森林に恵まれ、夏場は観光地としても人気が高い都市だ。しかし、冬季はほとんど毎日と言って良いほど冷たい雨が降り、寒さが身にしみる。2014年12月5日、前夜からの雨に加えて華氏38度(摂氏5度)と急速に冷え込んだこの日、市内のコンベンションホールは、朝からその寒さを吹き飛ばすかのような熱い熱気に包まれていた。
「さあ、今からやることを良く見てよ。玄関ドアの交換工事はここに気をつけないとダメだ」
ヘッドマイクをつけた施工のプロ・ゲイリー・カッツ氏が、実際に取り付け工事をして見せながら熱っぽくデモンストレーションをし始めると、たちまち目の前の観客席が埋まり、あっという間に立ち見客でいっぱいになった。
「ビルディングクリニック」と呼ぶこのデモは、この日開催された住宅リフォームショー JLC LIVE の目玉の1つだ。広い会場内の6カ所に設置されたこのコーナーでは、住宅の造作、湿度管理、乾式壁などの様々なテーマで、施工実演が繰り広げられる。

施工体験が人気
来場者のリモデラー(リフォーム業者)のプロたちはそれを一瞬でも見損なわないように、食らいつくような視線を送っていた。
会場内では他にも最新の工具、検査機器、水まわりや外壁の改修システムなど、リフォームによって機能アップ、性能アップさせるのに効果がある様々な技術、商品の紹介が行われ、プロユーザーたちは熱心にそれらに見入り、説明に聞き入っていた。

工具・ツールなどの出展が多い(写真は3Mブース)
出展スペースは40%拡大3月開催は150%増見込む
「8回目の開催となる今年は出展スペースが40%も拡大し、105社の参加がありました。さらに来年の3月にニューイングランドで開催予定の同じショーは前回の200ブースから300ブースに一気に大幅増し、来場者も9000人を超すでしょう」
このイベントの主催者であるハンリー&ウッド社のマネージャー、ナッサン・ハーダー氏は意気軒高だ。
米国の住宅関連イベントと言えば、プロなら誰もが知っているのはNAHBと呼ばれるビルダーズショー。KBIS(キッチンバスショー)もそこそこの知名度だが、このJLC LIVEのことは日本では無論、米国の業界内でもあまり知られていない。だが規模こそ小ぶりながら、参加者の熱心さはなかなかのものだ。
展示会場に隣接したセミナー会場では開催3日間で延べ40を数えるセミナーが開かれ、早い回は朝7時30分からスタートする。セミナー会場内は受講者からの質問が次々と飛び交い、ちょっとした禅問答を見ているかのようだ。

デニス・ディクソン氏による「固定価格VSコストプラス方式」のセミナー
テーマは施工、プランニング、契約から財務、人材、マーケティングまで実に様々。しかも「契約を固定価格にするか、それともコスト積み上げ式にするか」などいずれも具体的、実践的な内容ばかりだ。
延べ2000人を超す来場者は1日参加でも最低1万5000円、3日間通しだと4万円以上する参加費を支払って来ている、と聞いて、なるほどその熱心さに合点がいった。
―――続く
≪連載2回≫ 同業社をM&A米国でも稀な手法で成長 ~リフォーム先進国アメリカを訪ねる(2)~
≪連載3回≫ 断熱改修5年で20倍。会社の3割を稼ぐ ~リフォーム先進国アメリカを訪ねる(3)~
≪連載4回≫ 巨大市場を支える全米1万超の流通業者者 ~リフォーム先進国アメリカを訪ねる(4)~
≪連載5回≫ 強まる流れ、流通業者が消費者に直販 ~リフォーム先進国アメリカを訪ねる(5)~
≪連載最終回≫ 消費者ニーズに対応、「卸売」と「小売」の垣根なし ~リフォーム先進国アメリカを訪ねる(最終回)~

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