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同業社をM&A米国でも稀な手法で成長~リフォーム先進国アメリカを訪ねる(2)~

同業社をM&A米国でも稀な手法で成長 ~リフォーム先進国アメリカを訪ねる(2)~

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 米国REMODELING誌が毎年夏に独自調査し発表している、全米のリフォーム業者ランキングには550社が名を連ねる。昨年、そのフルサービス部門で全米4位となったのが、ポートランドに本社を構えるニールケリーカンパニーだ。市内の本社事務所にトム・ケリー社長を訪ねた。

―――取材・文 本紙社長:加覧光次郎
ニールケリーカンパニーの本社事務所
ニールケリーカンパニーの本社事務所

全米4位のニールケリーカンパニー

 「よく来てくれました。まずは社内をぐるっとご案内しましょう」

 道路を挟んで2つの建物がある本社にはざっと30人以上のスタッフがいるだろうか。ケリー氏は、ショールーム、デザインオフィス、セールススタッフルームと、各部門の部屋を30分近くかけて回りながら、従業員にジョークを交えつつ声をかけていた。スタッフたちもそれににこやかに応える。社内全体に広がる経営トップに対する信頼感の強さがすぐに分かった。

ニールケリーカンパニーのトム・ケリー社長(右)と本紙社長加覧(左)
ニールケリーカンパニーのトム・ケリー社長(右)と本紙社長の加覧(左)

 同社は過去、REMODELING誌が再三、特集記事で取り上げていることが示すように、優れた経営で高い評価を受けている。毎年、優良リフォーム業者に与えられるフレッド・ケース賞は過去5回受賞している。

事務所内の壁には同社の紹介記事が貼られていた
事務所内の壁には同社の紹介記事が貼られていた

デザイン力武器に工事単価は800万円

 1947年に父親のニールケリー氏が創業した同社は、地元ポートランドにしっかり根を下ろしている。現在は年商28ミリオンドル(約32億円)。オレゴン州内に4カ所、さらに隣のワシントン州シアトルにも支店を構え、5拠点で200人以上の従業員が働いている。得意は何といってもデザイン力を武器にした水まわりなどのリフォーム。年商のほぼ半分を稼ぎ出すこの部門の平均工事単価は日本円にして800万円にも上る。

ショールームのキッチン
ショールームのキッチン
キッチンキャビネットは同社自社工場で作られている
キッチンキャビネットは同社自社工場で作られている

 だが、同社がスゴイのは、それだけハイレベルのデザイン力や提案力を持ちながらも、地域密着企業の大きな使命である小修繕工事部門もしっかり抱えて、いることだ。

 「ハンディマン」と呼ぶこの部門はいわゆる便利屋のようなもので、シャワー交換や換気扇の交換、その他様々な修繕工事を請け負っている。中には外装塗装などの比較的大きな工事も含まれるが、それでも平均単価は約20万円にしかならない。「確かにハンディマンの工事金額は低いが、良質なサービスを続けていくためにこれは必要なことだと考えています」(ケリー社長)

 今から約20年前、1994年に始めたこのサービスは地元住民のいわば駆け込み寺になっている。同社のハンディマンは5年の工事保証までついており、こうしたことが地域住民に安心感を与えているのだろう。現在の同部門の年間売上高は2億円に達するそうだ。

 また、地域住民を対象にしたイベント開催などにも熱心で、本社で毎年9月に開催するのが、リモデリングストリートフェア。「セミナーや展示の他、フードサービスや子供向けのフェイスペインティングなどが人気で毎回、300~400人の来場者があります」(ケリー社長)

後継者問題キッカケ自然な形で企業買収

 アメリカ北西部でナンバーワン、今や全米でもその名を知られる存在となっている同社だが、今のような企業規模になったのは案外と最近にすぎない。トム氏が社長を引き継いだのは1980年代だが、それからもしばらく長い間、同社は拠点展開には慎重だった。

 何しろ国土の広いアメリカのことだ。新拠点を構えるといっても、100マイル(160キロ)離れているのも当たり前。事業の継続性を考えると先行投資のリスクが大きい新規出店は、おいそれとはできないからだ。実はそれを可能にしたのがM&A、すなわち企業買収だったという。これまでに5社を買収している。

 だが、ケリー社長はそのどれもただ拡張のために戦略的に買ったものではなく、むしろ自然な流れで決まったものだと語る。

 「どの会社もほとんどが後継者問題がキッカケになっています。つまり、事業の継続に困難が生じた会社と、事業拡大に努めたい当社の希望がマッチしたのです」(ケリー社長)

 M&Aが盛んな米国でも、リフォーム業界での買収事例はまだ稀だという。だが、こうした自然な形での企業買収のあり方は、中小オーナー企業が多い日本のリフォーム業界でも表われてきてもおかしくはない。

―――続く。
 ≪連載1回≫ 市場規模40兆円の巨大産業最新事情 ~リフォーム先進国アメリカを訪ねる(1)~
 ≪連載3回≫ 断熱改修5年で20倍。会社の3割を稼ぐ ~リフォーム先進国アメリカを訪ねる(3)~
 ≪連載4回≫ 巨大市場を支える全米1万超の流通業者者 ~リフォーム先進国アメリカを訪ねる(4)~
≪連載5回≫ 強まる流れ、流通業者が消費者に直販 ~リフォーム先進国アメリカを訪ねる(5)~
≪連載最終回≫ 消費者ニーズに対応、「卸売」と「小売」の垣根なし ~リフォーム先進国アメリカを訪ねる(最終回)~
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