リフォーム新ビジネス ≪キーワード:地域一番≫
より効率的な営業活動を行うためには、狭いエリアで、自社のシェアを高めることが効果的―――。そのお手本になるような企業が千葉県にある。高橋工務店(千葉県千葉市)は、営業エリア約3万世帯の25%の7500世帯から受注を獲得。車で15分圏内以上は一切出ない形で3億円を売り上げる、徹底した地域密着営業を貫いている。
高橋工務店(千葉県千葉市) 高橋澄雄社長
高橋工務店が営業活動で使う冊子には、丁ごとにコピーされた地図がファイリングされている。そこに掲載された住戸には青やオレンジでマーキングされており、丁によっては約半分の住戸が色で染まる。塗られた場所は同社が何らかの工事をした住宅。40年の歴史で、地域シェアは2割を超えた。
高橋澄雄社長は、こうしたシェア獲得の背景にあるのは、同社が行うCI活動と話す。
CIとはコーポレートアイデンティティの訳。つまり惚れられる会社づくりが目指す先だ。そのために、地域での自治体の活動には積極的に参加する。夏祭りへの出店、スポーツ大会の参加、文化祭の応援、餅つき大会への薪の提供など、定期的に行うイベントへの応援、賛助だけでも年10件を超える。イベントには一切、営業活動は持ち込まないが自然と高橋工務店の知名度が上がる活動は行う。そのため重要な役割を担うのが同社のオリジナルキャラクター、「ハッピーキャット」だ。

毎月配布するチラシ。自作4コマ漫画で親しみやすくする工夫をしている
至る所にハッピーキャット
同社の周辺では、30年近く前、アルバイトに作ってもらった猫のキャラクターが至るところに登場する。イベントの社員が着るシャツ、貸し出す机に張られたシール、車に付けるマグネット。今では、青い法被を着た白い猫「ハッピーキャット」を見ただけで、「高橋工務店だ」と認識する人も多い。

至るところに登場するハッピーキャット。キャラクターで企業の認知度向上を図る
今でこそ当たり前な、キャラクターによる宣伝活動を同社は30年前から取り入れてきた。テレカ、切手、ティッシュ、キーホルダーなどの販促グッズもすべてハッピーキャット。工事看板やシートにも猫が書かれている。
極めつけは、毎月3万部折り込むチラシ。協力会社と連携して作る手書きのオリジナルチラシにも猫が大量に出てくる。ここにも商品と価格が明記されるような直接的な営業活動は一切ない。コンセプトは「見て楽しく、読んでためになり、ストーリー性があること」と高橋社長。
例えば、10月のチラシに書かれていたのは、同社で3回目の工事を頼んだ施主のドキュメント。足が悪くなり階段が上れなくなったため、階段を架け替え、段差を低くした工事の状況を施主の言葉で掲載した。
読んでもらう工夫は表面の4コマ漫画にもある。漫画だと読んでもらえる上、社員や協力業者を登場させているので、スタッフを知ってもらうきっかけにもなる。
ただ、こうした宣伝、告知活動には費用がかかる。特に地域貢献活動は、頻度が高いため、負担額が大きい。高橋社長はその点を「その代わり営業マンがいない、営業マン1.5人分くらいのコストで済みます」と話す。
施工の良さプラスαの価値
高橋社長以外で在籍するのは事務員を除いてほとんど職人。工事を実際に担当する大工であり、年間1600件の工事を担当する中心スタッフとなる。高橋工務店を知り、工事後に約8割がリピーターになるのは、彼らの役割が大きい。
「現場はCI劇場と名付けています」と高橋社長。高橋工務店が現場に入ると道路まできれいになると感謝される時が多い。いかにお客さんに惚れられるかに焦点を合わせ、施工が良いのは当たり前、現場の徹底した掃除、トイレを使わないなど独自のルールで、プラスアルファの満足を獲得してきた。
その考えは業者にも浸透させている。年に1回の特別研修会に参加し認定書が発行されなくては、同社の協力を続けられない。その代わり、一緒に仕事量の目標を掲げ、収入を増やす協力もするし、支払いは毎月決まった日付、時間に必ず行う。両者が一体となって、惚れられる会社づくりに取り組んでいる。
一生涯の付き合いを行い、25~30年で発生するであろう1000万円のリフォーム工事、建て替えもすべて依頼されることが、目指す姿。「今後もこの地域を出ることはありません。15分圏内でできることはまだまだあります」(高橋社長)

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