「リフォームの潜在ニーズをどのように掘り起こすか」。業界の最大テーマであり、実現できている企業は少数に限られる。ところが、さまざまな業種に目を向けると、需要の掘り起こしに成功している企業は無数に存在し、急成長を遂げているところも多い。テーマごとに"異業種企業"と"リフォーム会社"の2社を紹介する。
【テーマ5】 顧客共有
≪リフォーム会社≫ アネストワン
1万4000冊の小冊子を配布
中古住宅購入者に向けたリノベーション提案を行うアネストワン(愛知県名古屋市)は、自社で作成した小冊子を雑貨屋やカフェ、美容院などに配置、年間1万4000部を配布している。さまざまな異業種の店舗に訪問したユーザーを自社顧客として呼び込み、受注につなげることに成功している。
同社が、異業店舗への小冊子配布を始めたのは今から、10年前の2004年。当初はB4サイズの3つ折りのもので、会社紹介の内容だった。
「とにかく、うちの会社を知ってもらおうというところからスタートしました。最初は、歩いて行ける近隣の雑貨屋さんやケーキ屋さんに置いてもらったのが始まりです」(青山信春社長)
その後、会社案内だけでは面白くない、との考えから内容を一新。2007年からはB5サイズに変え、豊富な事例を載せ中古住宅のリノベーションの魅力を伝える内容に一新した。
「リノベーションとはどういうものかを、伝える冊子に変えました。そして、テイストの合うショップに絞り、ほとんど飛び込みで置いてもらうことを頼みました」(青山社長)
全体集客の2、3割を小冊子から獲得
内容の変更が成功し、配布店舗は増加。現在では、写真店や美容院、パン屋など業種の幅も広がり、その数が約100店舗となった。同社は中古住宅を購入する40~50代、こだわりを持つ一次取得者をターゲットにしていることから、オシャレやデザイン性に関心が高い人が集まりそうなショップを厳選して配布依頼をしている点が特徴だ。
同社の平均単価は約1200万円、前期売上高は3億5000万円を記録した。全体集客のうち2、3割がこの冊子から引き合いがあった案件となっている。
≪異業種≫ ワシントンホテル
宿泊以外の付加価値 タニタとコラボ
自らの睡眠が快適なものか、睡眠の質の評価を計測できる部屋が東京・秋葉原のワシントンホテルに誕生した。体組成計のタニタとのコラボレーションにより生まれたこの部屋は、通常のツインルームの価格にプラス1000円で利用が可能。
ホテル側は宿泊以外の付加価値を提供でき、タニタにとっても、自社の商品を実際に体感してもらうチャンスとなる。双方にメリットがある取り組みが今年から本格的にスタートする。
同ホテルでは、差別化と話題性を目的に「快眠ルーム」なる部屋を2部屋作り、2010年から提供してきた。この「快眠ルーム」は快適な入眠と起床をサポートするパナソニックの寝室環境システムを導入した部屋で、入眠、起床時間に合わせた照明の照度の変化や音楽などで、快適な眠りを支援する。この度、この「快眠ルーム」にさらなる付加価値をつけるために、タニタのシステムを導入した宿泊プランを設定した。
呼吸などから眠りの質を測定
新しいプランでは、睡眠の状態をモニターできる睡眠計「スリープスキャン」を活用できる点が最大の特徴。ベッドの下にある「スリープスキャン」が寝ている人の体の動き、呼吸等から眠りの質を測定。測定結果はWiFiを通し、タニタのサーバーに送られる仕組みだ。 測定項目は「睡眠時間」「睡眠リズム」「深い睡眠」「途中の覚醒」の4つ。これらの結果を合わせ、100点満点で、点数が表示される。実際に、点数を確認するには、タニタの管理画面にネット上からアクセスする。
同ホテルの沼田充弘チーフマネージャーは新たなサービスを取り入れた部屋づくりをした理由を次のように話す。「改装に合わせてコンセプトルームを取り入れようと、この快眠ルームを作りました。隣には秋葉原らしい、鉄道のジオラマが置いてある部屋もありましてとても人気です」

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