国内に800万戸超あるとされる空き家を、持ち主に代わって管理するというサービスが続々と増えてきている。具体的なサービス内容や、事業者、市場参入の背景についてリポートする。
8つの基本サービス
空き家の管理サービスとは、主に8つからなる。今年5月にスタートした大和ハウス工業の「空き家巡回サービス」を例に具体的な内容を解説する。
1つ目のサービスは空き家の「通風・換気」。これは開閉可能な窓を20分間解放する。2 つ目は「通水・水漏れ確認」。水道を5分間開栓し、漏れがないかどうかをチェックする。3つ目は「屋内外の巡回確認」。破損などがないかを調べる。4つ目は「雨漏り確認」。
5 つ目は「簡易清掃」。6つ目は「庭木・雑草の確認」。7 つ目が「ポスト整理」。8つ目が「診断結果の報告」となる。
価格は5000円~1万
様々な事業者が空き家管理サービスに参入しているが、先に紹介した8つを基本サービスとするケースがほとんど。月1回の点検が主流。中には2カ月に1回という頻度を減らしたものや、1カ月に2回という手厚いサービスを提供する会社もある。
標準プランの価格帯は月5000円〜1万円が多い。戸建てに比べマンションは割安になるケースが多い。
その他、近隣のクレーム対応や「管理物件」であることを示す看板の設置、紙やメールではなく動画による報告書をサービスに含め他社と差別化を図る会社もある。また、どの企業も別途料金で対応するオプションを用意。例えば伸びきった庭木の剪定(せんてい)、ゴミ処理などがある。
大和ハウス工業は、管理する空き家を賃貸に出したり、リフォームしたり、売却したり、「運用」や「活用」のサポートまで行う。管理だけで稼ぐのではなく、空き家の有効活用で収益を見込んでいる企業も多い。
鉄道、警備、NPOも
現在、空き家管理サービスを提供している主な会社を表にまとめた。ジャンル分けすると、積水ハウスや住友林業といったハウスメーカー系、三井不動産、住友不動産、東急リバブルなどの不動産仲介売買系、マンション開発の大京、賃貸建設・管理の大東建託などが参入している。また、セコム、ALSOKといった大手セキュリティー会社も、住宅警備サービスのオプションとして提供している。
その他、京王電鉄や静鉄グループなどの鉄道会社が、沿線の住宅価値維持のために管理を始めるケースもある。また、地域の街づくりの一環として事業を行うNPOもある。
特措法が後押し
事業者が増えている要因は主に2つ。1つは空き家戸数が800万戸を超えるなどの調査結果が公開されたこと。もう1つが今年5月に「空き家対策特別措置法」が施行されたこと。大和、住友、大京などはまさに特措法が始まることを見越して5月からサービスを開始している。
放置された空き家が「特定空き家」に認定されると所有者は自治体から指導や命令を受ける。自ら管理できない空き家の所有者から、「誰かに代行したい」というニーズが今後増えていく、と見られる。事業者の市場参入が相次いでいるのはそのためだ。
現状、空き家管理業を始めるには特別な資格や規制などはなく、誰でも自由に始められる状況。今後も多数の事業者が参入すると見られる。
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