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かつて教室、今はギャラリー
廃校も使い方次第で新たな価値を生み出せる。東京都千代田区にある「アーツ千代田3331」は、十数のギャラリーがテナントとして入るアートの一大拠点だ。実はこの建物、以前は中学校。それが今や年間80万人が来場する人気スポットになっている。リノベーション計画を手掛け現在も運営・管理を行っているコマンドAで広報を担当する稲葉智子氏に再生のコンセプトや利活用の今について聞いた。
築39年の旧学校。公園に開かれたウッドデッキ。上がればアーツ千代田3331のエントランス
(C) 3331 Arts chiyoda
床材に名残
アーツ千代田3331の中にあるギャラリーのひとつ「エイブル・アート・ジャパン」を訪れると、個性的なアート作品がずらりと並んでいた。実はここ、かつては教室だった場所だ。
既存の壁と天井は取り払われ、壁は真っ白にペイント、天井は配管むき出しのままの仕上げと、無機質な雰囲気だが、フローリングは学校としての名残が感じ取れるものになっている。既存の床がそのまま使われており、「どことなく学校の懐かしさが感じられるというのがここにはあります」と稲葉氏は話す。
廊下や水道、黒板や下駄箱など既存の「学校を形作る要素」はテナント内だけでなく、随所に残されており、「学校の面影を消し過ぎないように」(稲葉氏)が再生の上で重視された。というのは既存を生かす設計が、一般的な商業施設やオフィスビルには出せない個性となっており、建物自体もアート感あふれるものとなるためだ。
天井は配管むきだしだ
アーツ千代田3331には実に13のギャラリーが集う。どのギャラリーも以前は教室などで使われていたが、今は様々な種類のアートが飾られ、多くの美術ファンを引き寄せる空間になっている。稲葉氏は「これだけ密集して入っているケースは珍しい」と話す。
テナントだけでなく、一階には巨大な「メーンギャラリー」があり、様々なアート展が開かれている。例えば今年は広告の展示会「TCC広告賞展2017」やヨガのイベント「ORGANIC LIFE TOKYO 2017」、遊休不動産を再生して地域を活性化させるイベント「リノベーションまちづくりサミット!!! 2017」などが開催された。また、夏場には「明後日朝顔プロジェクト」という、地元の学校とともに朝顔を育て建物に緑のカーテンを作るという取り組みも行われている。
なぜ廃校をアート拠点に変えたのか。実はこの廃校活用の発端となったのが、学校の所有者である千代田区の「ちよだアートスクエア構想」というもの。芸術文化の発信拠点を作る取り組みで、その場としてこの廃校が拠点として選ばれた。
教室がギャラリーに (C)3331 Arts chiyoda
地域に開かれる
アーツ千代田はただのアート拠点ではない。コンセプトは「地域に開かれたアートセンター」だと稲葉氏は話す。例えばエントランスは目の前の「練成公園」とウッドデッキでつながるような設計にされており、地域に開放されている印象を与えるようにできている。学校2階部分の壁を大胆に取り払い、大開口の窓を設置。そしてウッドデッキを敷き、外部から中がのぞけ、内と外がつながるエントランスにした。

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