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先日開催された「リノベーション・オブ・ザ・イヤー2013」(リノベーション住宅推進協議会主催)でグランプリを獲得したブルースタジオ(東京都中野区)。同社の強みについてキーマンの大島芳彦専務取締役に取材した。過去に手掛けた2つのプロジェクトから、同社のリノベーションの特徴を紹介する。
駐車場をこみちに
「リノベーションで重要なのはソフトウェアの更新。例えばハードである建物はそれほど直さず、使い方・暮らし方というソフトを変えるだけで既存住宅の価値を生み出すことができます」。こう話すのは大島専務。同社の作品が評価される理由の1つは、建物の意匠性を高めるだけでなく、そこに住むことによって新しい価値を生み出す設計が取り入れられていることだ。
「リノベーションというと、単にたくさんのお金をかけて建物を直すことと捉えられているケースもありますが、価値を再構築したり、再構成したりすることがより大きなテーマで、建物を直すことはその中の1つの要素です」
このような設計思想は例えば、「U&Mekomichi(うめこみち)」という賃貸アパートのリノベーション事例に良く表れている。この事例は築60年の賃貸アパート(東京都大田区)を再生し、その両脇に2棟の賃貸アパートを新築した事例。これらの建物の正面には、既存の賃貸マンションがある。この4棟はオーナー家族の建物ということもあり、プロジェクト名は「たてもの家族」と名付けられた。
【U&Me komichi】
Aは築60年の賃貸を再生した物件。両脇のBとCは新築。手前にあるDは築30年のマンション。一族が持つ4つの建物の中央部分をそれぞれの入居者の共用部として交流できるスペースに仕上げた
このプロジェクトで最もユニークなのは、これら4棟の中心部にあった駐車場を、それぞれの賃貸に住む住民たちが集える「コミュニケーションの場」として使える共用部に変えたこと。この場を通って、各住戸に入っていくこみちとなっており、お互いが自然と出会い、対話できるようになっている。
再生した築60年アパートの室内(A)
コミュニティの魅力
完工お披露目会には、オーナーを中心に、餅つきなどの交流イベントが行われ、百数十名が訪問。大島氏は、「賃貸住宅の価値である『共同』や建物の歴史、街とのつながりに目を向けて、価値を最大化しようとしました」と話す。住民同士や、街の人同士が集える場があるという、その共同の価値の魅力が分かるイベントで、築60年の賃貸アパートには、その日のうちに入居申し込みがあった。
「入居以後はごく自然にみんなで声を掛け合って、コミュニティが出来上がっていきました」(大島氏)
単に建物を再生するだけでなく、共同の価値や住民のコミュニティを生み出す仕掛けを施したことが、建物のハードの価値とはまた別のソフトウェアの価値がプラスされることで、既存住宅の価値が高まった事例と言えるだろう。

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