リフォーム業界基本の「キ」「市場規模」編
住宅産業は「新築からリフォームへ」と言われて久しいが、本当にリフォーム業界は伸びているのか?また、コロナの影響はどれだけ受けたのか。この記事では、リフォーム市場規模の他、2022年の最新動向や課題、今後の展開・将来性について、業界専門紙を発行する「リフォーム産業新聞」が解説する。
目次
【1】リフォーム市場規模は6.2兆円!過去の数年の推移と予測を公開
【2】リフォーム業界最新動向!ステイホームから性能向上へ
【3】可能性はあるのになぜ「ほぼ横ばい」?業界が抱える問題点を解説
【4】リフォーム業界に将来性はあるのか。今後の展開を大予測
リフォーム産業新聞は住宅リフォーム市場向けの経営専門紙です。
1987年の創刊以来、マーケットトレンドや行政、企業の動向、経営戦略・ノウハウ、商品などの経営に役立つ情報を発信しています。大手住宅会社や有力リフォーム、工務店、専門工事店、住宅設備・建材メーカー、流通など業界内の幅広い層にご購読頂いています。
【1】リフォーム市場規模は6.2兆円!過去の数年の推移と予測を公開
2021年→2022年、5.9兆円から6.2兆円に増加
リフォーム産業新聞で推計したリフォーム市場規模では、2022年のリフォーム市場規模は約6.2兆円。2021年の5.9兆円から約 5 %増加した。
2020年は新型コロナ感染拡大により、一時期市場は冷え込んだ。しかし、「巣ごもり」生活の中で改修需要が高まったことで、2021年にはコロナ前の水準を超えた。
2022年も、コロナ禍で変化したリモートワークなどのライフスタイルは継続。在宅時間が以前より長くなっていることで、引き続きリフォームの需要が高い傾向にある。また円安等による資材費・人件費の上昇によってリフォーム工事単価が上昇していることも、市場規模の増加に寄与していると考えられる。
最もリフォームされている部位は水回り、全体の約29%
リフォーム市場規模を「水回り」、「内装」、「外装」、「その他」の 4 カテゴリーに分類し、それぞれの市場規模の推移を分析した。
最も大きいのは水回りで、約1.8兆円の市場規模があり、リフォーム市場全体の29%を占める。
市場規模が大きい理由として、キッチンやバスの工事単価が高いこと、給湯器などの交換サイクルが比較的早い商材が含まれていることが考えられる。
内装は約1.4兆円。単価は低いが、水回りを改修する際に壁紙や床材を張り替えるケースも多く、需要は高い。外装は約1.3兆円で、内装と同程度の市場規模だ。
塗装は単価が高く、かつ築30年目までに 2 回程度行うため、需要が安定している。
その他には、空調や外構、断熱・耐震などの改修を含む。
【2】リフォーム業界最新動向!ステイホームから性能向上へ
リフォーム業界はここ10年、6兆円前後の規模で安定して推移しており、コロナ禍でさえ大きく落ち込むことがなかった。
今後、コロナ禍のステイホームで一時的に高まったリフォーム需要は落ち着く可能性はあるものの、リフォーム市場はゆるやかに拡大していく見込みである。
リフォーム業界の安定した市場を支えているのは、潜在顧客の多さと異業種からの参入だ。またこれまでのステイホーム需要の代わりに、今後は「住宅性能向上リフォーム」が活発化すると予測される。
リフォームの潜在顧客は、全世帯の6割超!
市場規模を考える上で重要なのは、リフォームを依頼する潜在顧客がどれくらいいるかだ。
世帯主の年代が「55歳~74歳」を「リフォーム コア世帯」、「40歳~54歳」をきっかけがあればリフォームをする「リフォーム潜在世帯」とした場合の2040 年までの見込み数を下記表にてまとめた。 2020年の「コア世帯」は35%で、「潜在世帯」は26%、合わせて全世帯の6割超になる。
コア世帯の数は1924万世帯から1800万世帯台前半まで下がるが、2040年に再び1937万世帯に。少子高齢化で人口減は進むが、この「コア世帯」「潜在世帯」は、2040年でも合わせて58%を占め、リフォーム需要は継続することが推測される。
出典 2018年(平成30年)国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(全国推計)』
住宅ストック全体の76%がリフォーム適齢期住宅
総務省が2018年に実施した調査によれば、空き家や建築年不明を除いた住宅の数は4890万8200戸ある。1971年~2010年竣工(築8年~47年)までを、何らかのリフォームが行われる可能性が高い「リフォーム適齢期住宅」とすると、全住宅の76%を占めていることが判明した。その数は約3700万戸になる。
適齢期住宅の中で最も数が多いのは、1991年~2000年までの家で、1078万戸。これらは住宅設備の交換や外装改修の2回目を迎える。
次いで多いのは2001年~2010年で1005万戸はメンテや1回目の外装リフォーム需要が多い。1971年~90年を合算した1656万戸は、全面改装か、建て替えかを検討する層となる。
出典 2018年(平成30年)国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(全国推計)』
異業種の参入も激化!
消費者がリフォームを頼む窓口が急増していることも、潜在ニーズを顕在化させている一因だ。近年リフォーム専門店だけではなく、消費者に身近な異業種の参入も著しい。例えば、ヤマダデンキやエディオンといった家電量販店がそうだ。
また、工務店やビルダーも、新築で培ったプランニング・設計力を生かし、リノベーションに参入するケースも目立つ。
リフォーム業を始めるために異業種のM&Aも増加中。コロナで本業が危うくなる可能性を想定しサイドビジネスとしてリフォーム業は注目されている。お客さんと一度きりにならず長期的な関係構築ができる点が魅力のようだ。
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性能向上リフォーム活発化、補助金や震災の影響で
脱炭素社会の実現に向けた良質な住宅ストックの確保は、日本の喫緊の課題だ。そのために、断熱・耐震など住宅の性能を向上させるためのリフォームを推進していく必要がある。
2023年からは「先進的窓リノベ事業」が開始するなど、国や地方自治体が積極的に補助金・助成金施策を実施し始めた。またリフォーム関連事業者によるパッケージ型の商品の提案や、建材メーカーによるPR等も増えてきている。
加えて2024年1月に発生した令和6年能登半島地震では、被害の多くが住宅の倒壊に起因していたことが世論に衝撃を与えた。
性能向上リフォームの需要はまだ顕在化していない段階ではあるものの、このようにリフォーム提案を強化する動きや消費者の認知は高まっており、需要拡大の余地は十分は十分にある。
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【3】可能性はあるのになぜ「ほぼ横ばい」?業界が抱える問題点を解説!
リフォーム市場は今後も緩やかに拡大していくと予測できるが、市場拡大を阻害する要因も出てきている。
例えば、職人不足や、後継者不足による廃業などだ。
職人をはじめとした人材不足が深刻化
「リフォームの問い合わせはあるが、対応できない」昨年からこういった声が現場で高まるようになってきた。その要因は職人をはじめとした人材不足だ。
日本の人口は減少の一途をたどっている。
またリフォーム業界は「3K(きつい、汚い、危険)」のイメージが強く、昨今の若者に人気があるとは言い難い。
そのためDX・業務効率化や働き方改革によって、人手不足の解消に取り組むリフォーム会社が増えてきている。
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後継者不足で廃業も
リフォーム会社の課題として後継者がいないことが上げられる。数多くの廃業が増えれば市場縮小に繋がる可能性もある。建設業界にはバブル期の30年ほど前に設立した会社が多い。当時30〜40代で起業した経営者が、引退を考え始めるタイミングを迎えている。だが事業承継が物理的に難しい会社も少なくない。
例えば家族の誰かに承継を考える場合。地方に会社を構えている中、家族が都会に出て他社に就職しそのまま帰ってこない、または贈与税が発生するため断念といったケースが挙げられる。さらに家族ではなく社内の人材でも、株を買い取ったり税金もかかることに抵抗することも見られる。
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【4】リフォーム業界に将来性はあるのか。今後の展開を大予測!
コロナ禍においても需要がありつつ、資材の納品遅延や後継者不足なども課題もあるリフォーム業界。将来性はあるのか。
リフォーム市場規模、2030年には7.7兆円の見込み
リフォーム市場規模の推移をグラフにした。
2023年は7.4兆円、2024年は7.2兆円を見込む。その後ゆるやかに拡大し、2030年には7.7兆円に達すると見られている。
出典 矢野経済研究所
中古住宅+リノベーション活発化
さらに国土交通省は、リフォーム・リノベーションの市場規模に、中古住宅流通の市場規模を合わせた目標数値を発表。現状12兆円の市場を拡大し、2030年には14兆円、長期的に20兆円の市場に伸ばす方針がある。
この巨大市場の需要拡大により「中古住宅+リノベーションorリフォーム」は更に活発化していくと予想される。近年ビルダー、賃貸管理仲介会社、不動産売買仲介、リフォーム店、ガス・エネルギー会社などが参入。既に競争は激化しつつある。
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空き家問題をビジネスチャンスに変えよ
また中古住宅流通において、より空き家の利活用も求められると予想される。2018年に総務省が実施した「平成30年住宅・土地統計調査」によると、空き家数は約846万戸(5年前 調査約820万戸)、全住宅に占める(空き家率)は13.55%と微増ながら、過去最新を更新した。
国土交通省より2023年12月に「空家等対策特別措置法」が施行された。活用が難しい「特定空き家」の予備軍として位置づけられる「管理不全空き家」に対して、地方自治体による命令や、固定資産税の優遇を適用しない措置を取ることができるようになった。
リフォーム会社の中には、これらをビジネスチャンスと捉え、賃貸物件化して貸し出したり、地方で挑戦したい移住者を誘致して新しいビジネスを生む仕組みを作ったりする動きも広がっている。
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