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リフォーム業界基本の「キ」「中古住宅」編
近年、不動産仲介事業に参入するリフォーム会社が増加している。中古住宅を仲介し、リフォームも同時に提案するという事業を推進するためだ。ビジネスの仕組みや成功のポイントについて、リフォーム業界唯一の専門誌「リフォーム産業新聞」がリポートする。
目次
【1】「中古住宅仲介+リフォーム」のビジネスモデル
【2】「中古住宅仲介+リフォーム」事業立ち上げのメリット
【3】「中古住宅仲介+リフォーム」成功に必要な3つのポイント
リフォーム産業新聞とは?
リフォーム産業新聞は住宅リフォーム市場向けの経営専門紙です。
1987年の創刊以来、マーケットトレンドや行政、企業の動向、経営戦略・ノウハウ、商品などの経営に役立つ情報を発信しています。大手住宅会社や有力リフォーム、工務店、専門工事店、住宅設備・建材メーカー、流通など業界内の幅広い層にご購読頂いています。
中古住宅仲介+リフォームのビジネスモデル
仲介と改修を組み合わせたビジネスモデルについて解説する。
・ターゲット
ターゲットは主に中古マンションや中古戸建てを購入し、リフォームして住みたい住宅一次取得者層だ。世帯主の年齢は20〜40代が中心。
・提供するサービス
ターゲットに提供するサービスは主に3つだ。1つは中古住宅探しのサポート、売買仲介。2つ目が購入する物件のリフォーム、リノベーションの設計・施工。3つ目が住宅ローンのサポートだ。
・ユーザーの価値
1つの会社が物件探しもリフォームも担当するので利便性が高い。中古住宅を購入する際は不動産会社、リフォームはリフォーム店、と別々に依頼するケースが多い。ユーザーは2つの会社に相談しなければならないため、手間や時間がかかっていた。また、物件とリフォーム代金を1つの住宅ローンで組むこともできる。
- ビジネスモデルのイメージ
「中古住宅仲介+リフォーム」事業立ち上げのメリット
中古住宅の仲介とリフォームを組み合わせた事業を立ち上げることで、どんな経営メリットがあるのか。
・高単価、粗利益の高いリノベーションの契約に
この事業はユーザーが中古住宅を購入する際にリフォームも受注すれば、単価が高く、粗利益も高いリノベーションが契約しやすい。仲介だけでは、売り上げは仲介料のみとなる(手数料率=物件の成約金額×3%+6万円)。だがリフォームも一緒に提案して契約につながれば、工事費も売り上げに。また設備や内装材の取り換えだけではなく、全面改装を希望するケースが多い。
例えば志賀塗装(福島県いわき市)は、塗装事業を主軸としていたが2020年に別会社で中古住宅仲介とリフォームを手がける専門店を立ち上げた。同社では平均単価625万円のリフォームを35件受注することに成功。粗利率も約35%だ。仲介でお客さんとの関係を深めるため、リフォームの相見積もりも少ない。
志賀塗装「わが家」
志賀塗装
志賀晶文社長
・住宅一次取得者の顧客獲得に寄与
このビジネスでは、住宅の一次取得者の獲得につながる。ターゲットは、賃貸に住んでいる、または、親の実家に住む20代後半〜40代前半のファミリー層。
いつき家(三重県松阪市)では、リフォーム事業ではシニア層が多いが、中古住宅のリノベーションに参入後若年層の開拓に成功。商圏はリフォーム同様松阪市内だが、新しい若い層からの売り上げが伸びた。
リフォーム会社、太陽リビング(長野県東御市)では、リノベーションを強化したいと2021年から中古住宅を売る不動産事業を始めた。契約になる顧客は20代後半〜40代前半のファミリー層だ。特に首都圏の賃貸住まいの若者が多い。長野に中古物件を買って、リフォームして、移住してもらうというビジネスモデルを推進している。県内の不動産情報を首都圏在住者向けにサイト「athome」に載せるなどして、集客を図っている。若い顧客にしっかりアフターフォローをし続ければ、再度リフォームの受注獲得になりやすい。
いつき家では、物件王の加盟店特典のホームページで集客をしている
いつき家
上月知樹社長
「中古住宅仲介+リフォーム」成功に必要な3つのポイント
「中古住宅仲介+リフォーム」の成功に必要な、3つのポイントを解説する。
(1)市場調査は入念に
まずは、地域の中古住宅市場を調査することが重要だ。志賀塗装は商圏内の中古住宅や新築の物件数、それぞれの価格帯などを調査した。新築と中古の価格差がないと新築を選ぶ人が多く、ビジネスが上手くいかない可能性もある。価格差がある方が、中古を売りやすい。
また中古住宅の総数に対し、何件仲介されているかの比率も重要だと、志賀晶文社長は話す。中古住宅が多くても、購入や売却する人が少なければ、中古の人気がない地域と分析できる。そのようなエリアでは商売が難しい。
太陽リビングは商圏内に空き家が多いことに注目した。重要なのは空き家の総数ではなく、売却する見込みのある空き家がどれくらいあるか、だと話す。
「空き家の数が多くビジネスチャンスだと思いましたが、いざ事業を始めると売却ができる戸建ては少ないと気づきました。売る意志のある空き家の数がわかるデータが重要です」(吉澤正憲社長)
さらに、商圏内に新築のローコストビルダーがどれだけいるかも重要だ。低価格の新築がたくさん市場にあると、中古住宅ではなく新築が選ばれやすい。
ほかにも競合を防ぐため、地元の不動産仲介会社がリフォームに積極的か調べる必要がある。
太陽リビングでは首都圏在住者に向け「at home」に物件情報を掲載
太陽リビング
吉澤正憲社長
(2)中古住宅仲介の人員体制を構築
中古住宅仲介の体制を構築することも、成功のカギを握る。実際に中古住宅仲介を誰が担うか、社内の人員体制を整備しよう。
志賀塗装が「わが家」を立ち上げる際は、リフォーム事業の担当者3人を任命した。その理由は「宅地建物取引士」を取得していたため。またリフォームの経験があるからこそ、中古住宅を探す段階で「この柱はリフォーム可能か」など建築の専門的な話ができると考えた。
オープン当初から、採用活動も並行。「中古住宅仲介とリノベどちらも行うと業務量が多いので、少ない人数だと難しい。当初は3人でしたが人数を増やしたいと、現在は11人在籍しています。中古住宅仲介リノベの担当で半数の6人を割き、1人が事務員、2人が工務担当、不動産を売りたい方向けに営業を行う売買課2人と増やしました」と志賀社長は話す。
体制構築に不安を感じる会社は支援サービスを利用するのもひとつの手だ。その1つが「物件王」(運営会社物件王)だ。加盟店は不動産仲介のノウハウを研究会やセミナーで学べ、物件・顧客情報を管理するシステムや集客ホームページも活用できる。リフォーム会社で加盟しているのが、いつき家だ。上月知樹社長は、「本部に直接連絡をとるチャット機能もあります。法律や売買契約書についてなど専門知識のわからない点を質問した際、すぐ対応してもらえるので大変助かりました」と話す。
(3)リフォームの設計・施工力をPR
リフォームの設計力・施工力をPRすれば、お客さんの引き合いが増え成功につながる。志賀塗装では、55坪ある「わが家」の店舗内に33坪のリノベーション展示スペースを設けている。店内には、ビフォーアフターの写真やリフォームを再現したスペースを展示。また問い合わせがあったお客さんを対象に現場見学会を実施している。リフォームした現場を見てもらい、中古住宅でもリフォームをすれば新築並みになることの発信に力を注ぐ。
太陽リビングでは、中古住宅を選んでもらう際の提案に工夫を凝らす。中古住宅仲介前に自宅がリフォームでどう変わるかイメージしやすいよう3Dパースを用いる。
わが家の店舗では、リフォームのビフォーアフターがわかる展示スペースを設けた
記者の目
リフォーム会社が仲介事業に参入すれば、新たな顧客層から単価の高いリフォームが受注できる。リフォーム単体とは異なるビジネスモデルだが、これまで培ってきたリフォームのノウハウを生かすことが可能だ。中古住宅の流通が進む中で、今後市場が拡大していきそうだ。
リフォーム産業新聞では、全国のリフォーム会社や工務店、住宅設備・建材メーカー、流通に取材を行っており、マーケットや企業の動向等の情報を発信しています。
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