~アメリカ キッチン&バス最新リポート 最終回~
米国のキッチン&バストレンドをリポートする本連載も5回目の今回で最終回。最後は日米のキッチン、バスリモデルの違いについてまとめる。

キッチンはリビングの中の家具の一部としてとらえられるようになってきている。デザイナーには空間とキッチンをうまく調和させる能力が求められてきている
デザイナーが主役
「アメリカには日本のようなキッチンメーカーがない」。こう話すのはキッチンデザイナーの育成事業を行うキッチンデザイナーズギルド代表で、米国の住宅市場に詳しい菊池クリス氏。
日本ではキッチンメーカーが開発したシステムキッチンを購入するというケースが一般的だが、米国では異なる。「アメリカではデザイナーがキャビネット、天板、シンク、水栓金具といったさまざまな部材を組み合わせて作り上げるのが主流」(菊池代表)。バスも同様で、システムバスのような完成された商品を購入するのではなく、デザイナーが浴槽、シャワー、床・壁材といったアイテムを組み合わせて空間をつくり上げる。
「アメリカのリモデルを一言で表すと『あなたのライフスタイルに合わせてキッチンやバスを作りましょう』ということです」(菊池代表)

モダン、ヴィンテージ風、木質感など、洗面化粧台のプランニングも多様なデザインがある。手洗い器はボウル型や、横長が最近のトレンド
60時間講習で腕磨き
オーダーが主流の米国では、デザイナーに求められる能力も高い。例えば、商品知識、空間構成能力、カラーコーディネート、トレンドを捉える力などが必要だ。
スキルアップのために研修制度を提供する団体もある。キッチン・バスの業界団体NKBAでは、デザイナー向けの研修や資格制度を運営している。
資格の一つである「CKD」は団体公認のキッチンデザイナー。「CKD」を取得するには、3年間、フルタイムでキッチンデザインの実務経験を持ち、なおかつ60時間の講座を受けなければならない。講座は「NKBAユニバーシティ」という学校で受けられるものもあれば、オンライン動画で学べるものもある。最終的に資格試験を受け、合格する必要がある。
NKBAには約5万人の会員がいるが、CKDを持つ者は約4000人にすぎない。資格を取得したキッチンデザイナーは名刺に「CKD」と明記するなどして実力をPRするケースが多い。

バス空間はよりリラックスできるようにリモデルするのが最近のトレンド。部屋の中心に浴槽を配置するようなレイアウトに変化を付けたプランも人気だ
米国らしさとは
今回の米国取材を通じて感じたのは、豊富なデザインパターンが存在するということだ。プランの自由度が高いため、一人一人の暮らし方に合わせて出来上がる空間はさまざま。この多様性こそが米国らしさといえるだろう。
―――≪連載1回≫ 米国は「ミックス」「欧風」「家具調」のキッチンがトレンド
―――≪連載2回≫ 米国キッチン新たな役割、作業場から"集う"場へ
―――≪連載3回≫ 米国、バスタブの「壁離れ」が人気 高機能から"浸かる"に回帰
―――≪連載4回≫ 米国ではキャビネットは自社製作

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