リフォーム業界基本の「キ」「塗装業界」編
リフォーム業種の1つである「外壁塗装」。住宅リフォーム市場全体は現在約7兆3000億円だ。その中の塗装リフォーム業界は伸びているのか。この記事では「塗装業界」のトレンドについて、業界専門紙を発行する「リフォーム産業新聞」が解説する。
目次
【1】塗装業界の市場動向
【2】塗装業界の5トレンド
リフォーム産業新聞とは?
リフォーム産業新聞は住宅リフォーム市場向けの経営専門紙です。
1987年の創刊以来、マーケットトレンドや行政、企業の動向、経営戦略・ノウハウ、商品などの経営に役立つ情報を発信しています。大手住宅会社や有力リフォーム、工務店、専門工事店、住宅設備・建材メーカー、流通など業界内の幅広い層にご購読頂いています。
【1】塗装業界の市場動向
●リフォーム実施部位で「塗装」はトップ
数あるリフォームの部位の中で、「塗装」の需要は最も高い。2020年のリフォーム市場規模を部位別の比率で見ると、「塗装」はトップで42%を占めている。2位は「大規模リフォーム」で22%と、塗装がダントツ1位だ。
「塗装」の市場規模はコロナ前の2019年から増加し、2020年は2兆8013億円となった。2位の「大規模リフォーム」は1兆4561億円だったため、ほぼ倍の差に。塗装の市場規模は5年連続1位となっており、2016年から3708億円増えている。
●好調の理由は
なぜ塗装リフォーム業界は改修工事で最も人気があるのか。それは戸建て住宅に長年住むには、外壁のメンテナンスが欠かせないため。塗装作業は外観のデザインを整えるだけではなく、防水性や断熱性など建物の機能を向上させる役割も果たす。快適な暮らしを送る上で必要で、景気に左右されない需要がある。
また塗装作業は屋外で完結し、職人と施主は距離が保つことが可能だ。そのためソーシャルディスタンスの確保が求められたコロナ禍でも、依頼しやすかったと分析できる。
給湯器やトイレなどのリフォーム商材は納品遅延が発生しているが、塗料は問題なかったことも市場拡大につながっている。
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【2】塗装業界の5大トレンド
「塗装業界」ではどんなトレンドがあるのか。5つ紹介する。
(1) 塗装業界に企業の参入が相次ぐ
リフォームの中でも景気に左右されずに安定した需要があるという点に注目し、近年様々な業態の企業の参入が相次でいる。特に見られるのが、下請け業者の元請け化だ。下請け専門で塗装を請け負っていた会社が、自社で集客を強化している。
その背景にあるのは、下請け経営の不安定性だ。消費者に直接営業できないため、知名度があがらず会社の拡大が難しい。また下請け工事の場合、受注金額が安くても自社で顧客獲得ができないためそのまま請け負わざるをえない状況も発生してしまう。この状況を脱却したいと元請け化が活発化している。
例えばアークス(埼玉県草加市)は、元請け開始2年目で年間1億8000万円を売り上げた。ショールームやプレゼン用の施工模型の展示、チラシや看板広告など自社の集客を強化してきた。
さらに元請けで、水回りや内装のリフォームを手掛ける会社も塗装リフォームに力を入れている。新たに専門部隊を設ける、塗装に特化した販促を強化するといったケースも。企業数が増えていく状況は今後も続くと予想され、差別化が必要となる。
塗装リフォームのノウハウを提供するFC・VCの増加も、元請けで参入する企業が増加している要因だ。代表的なネットワークとして、塗料メーカーを展開するアステックペイント(福岡市博多区)による全国ネットワーク「プロタイムズ」、リフォーム会社オリバー(富山県富山市)による外装リフォームネットワーク「ガイソー」がある。
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(2) 来店型店舗を出店
成約率を高めるために「来店型店舗」を構える会社が相次いでいる。カラーシミュレーションや見積書の提出をする打ち合わせの場として活用するだけでなく、商材を見せるショールームを設ける例も。
特に目立つのは、店舗の外壁に実際の塗料を施工して見比べられるようにしたり、実物大の塗料サンプルを用意するなど「見せる提案」への注力だ。外装専門店ゆうき総業(山形県上山市)のショールームには、塗料のサンプル材を88種も用意。60センチの正方形という大きさで、裏と表で4点ずつ組み合わせて、回転パネルとして設置している。
来場してもらうことで、消費者の本気度を高められるメリットがある。さらに社名や屋号を掲げた店舗により、知名度が高まり集客効果の発揮に。
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(3) 専門知識の発信に注力
消費者にとっては理解が難しい塗装リフォームの専門知識を、リフォーム会社自ら解説する動きが広まっている。工程や塗料など工事に関する内容だけではなく、「外装業者の見抜き方」など業者選びなど基礎からレクチャーするケースが多い。
解説方法も、リアルからオンラインまで様々だ。リホーム絆(東京都東村山市)は、「失敗しないための屋根と外壁のメンテナンス講座」と題したセミナーを実施。また中山コーティング(徳島県徳島市)は「塗装リフォームの教科書」を意識したYouTubeチャンネルを運営している。塗料紹介のほか、塗装リフォームを他社に依頼し失敗した施主のインタビューや現場のトラブルなど、失敗談や不安な点を解説した動画が人気だ。
情報発信を通じ、専門家としての信用が高めることが可能に。さらに、顧客が塗装・塗料に詳しくなり、プロの認める高単価のグレードの高い塗料を選んでもらいやすくなる。
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(4) マッチングサイト増加中
集客のためにマッチングサイトを使う塗装会社が増えている。サイト自体も次々と新しいものが登場してきた。
たとえば上場企業が運営しているのは「ヌリカエ」(運営・speee)、「外壁塗装の窓口」(運営・ポートグループ)、「プロヌリ」(運営・じげん)。
ほかにも、別業種のマッチングサイトを運営していた会社が新たに立ち上げたケースも。不動産一括査定サイトを手掛けるリビン・テクノロジーズ(東京都中央区)は「ぬりマッチ」を開始。解体工事業者のマッチングサービスを運営するMediaX(大阪府大阪市)は、「外壁塗装エージェント」を始めた。
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(5) 葺き替えや水回りを始める塗装会社も
差別化を図るため、新事業に乗り出す塗装会社もいる。例えば屋根工事は塗装だけでなく、ふき替え・カバー工法を商品化だ。年間400棟ほどの外装工事を手掛ける住泰(スミタイ)は、塗装だけではなく、屋根や外壁カバー、瓦の葺き替え、雨樋の交換、を提案している。単価増や成約率の向上を見込む。
また水回りリフォームを始めるケースもある。塗装は10年間ほどリピートが来ないので、その間、水回りの提案をすることで売り上げを伸ばすことに。水回りリフォームを通し顧客との関係を構築すれば、再度塗装のリフォーム受注につながる可能性が高まる。
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