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2016年末、流行語大賞にもノミネートされ話題となった「民泊」。2018年6月から民泊のルールを定める民泊新法がいよいよ施行されることもあり、注目が集まっている。所有物件を貸し出したり新たに民泊ビジネスを始める際に知る必要がある新法の内容、さらに大手企業も参入を始めた「民泊リフォーム」の動向など、本紙リフォーム産業新聞で掲載してきた記事を元にまとめた。
1.そもそも民泊とは?
2.民泊の現状と法整備
―ヤミ民泊問題
―民泊新法の制定とその狙い、ポイントと対策
3.民泊リフォームの具体例の紹介
―民泊リフォームとは?
―なぜリフォーム自体が必要なのか?
―ターゲットは海外観光客
―賃貸物件を改修
―新しい民泊の形
―人気の部屋のつくり方は?
4.大手企業から見た民泊
―大手企業の注目度、参入は?
5.民泊オーナー向け事業・情報紹介
―運営に役立つツール・サイトは?
―合法民泊改修のツボとは?
6.まとめ
1.そもそも民泊とは?
厚生労働省によれば、民泊とは個人が住宅(戸建住宅、共同住宅等)の全部又は一部を活用して宿泊サービスを提供することを指す。これまでは「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」かつ「繰り返し人を宿泊させ得る状態」にある場合は、旅館業法上の許可が必要と定められていた。
(出典)
厚生労働省:民泊サービスと旅館業法に関するQ&A
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000111008.html#HID3
一般的には、民泊を貸す人のことをホスト、泊まる人のことをゲストと呼ぶことが多い。ゲストはAirbnb(エアビーアンドビー)などの民泊ポータルサイトなどで部屋を予約し、宿泊する。最近では日本人の利用も増えてきたが、多くが日本への外国人旅行客が利用している。Airbnbの発表によれば、2016年に同サービスに掲載されている部屋に泊まった外国人旅行客は、370万人を超えるとしている。
ただ、これまでは旅館業法の許可を得ずにマンションの一室などを貸す、いわゆる「ヤミ民泊」が大半を占め、問題視されていた。2017年に民泊新法が制定されたことにより、年間の営業日数をはじめとした様々な制約はあるものの、一般住宅を民泊として貸し出すことが正式に認められた。また各地方自治体も民泊に関する条例制定の検討を始めている。
このように2018年は、正式にルールが整備される「民泊元年」であると言えそうだ。
実際の民泊物件の様子。一般住宅の一室だが複数人が泊まれるようなつくりになっている
2.民泊の現状と法整備
―ヤミ民泊問題
輝かしい成長を続ける民泊業界であるが、現状いくつかの問題も同時に抱えている。民泊物件が増える一方で近年目立つのが、ヤミ民泊の出現だ。
問題に詳しいアヴァンス行政書士法人の代表行政書士、田中靖之氏はこう話す。
「民泊を仲介する大手のサイトを見てみますと、例えば『最低宿泊日数1泊』からと表記されている物件がありますが、これは特区民泊のルールならば最低2泊3日ですから『ヤミ民泊』なんです。普通のアパートやマンションの一室を貸し出しているようなものであれば、適法ではない確率が高いと思われます」
詳しくは... アヴァンス行政書士法人、特区民泊「大阪市」に蔓延するヤミ物件
https://www.reform-online.jp/news/reform-shop/12634.php
―民泊新法の制定とその狙い、ポイントと対策
こうした現状が行政の中でも問題となる中、民泊新法が制定された。この法律はヤミ民泊の対策を目的の1つとしている。
詳しくは...民泊新法、6月施行
https://www.reform-online.jp/news/administration/12649.php
国土交通省観光庁から制定されたこの法律は、それぞれ事業別に細かく規定されている。
住宅宿泊事業者に関わる制度
・事業者は都道府県知事への届け出が必要
・年間提供日数の上限は180日とする
・都道府県知事は、住宅宿泊事業者に関わる監督を実施
住宅宿泊管理業者に関わる制度
・国土交通大臣の登録が必要
・国土交通大臣は、住宅宿泊管理業者に関わる監督を実施
住宅宿泊仲介業者に関わる制度
・観光庁長官の登録が必要
・観光庁長官は、住宅宿泊仲介業に関わる監督を実施
参考: 国土交通省 観光庁 住宅宿泊事業法
http://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/sangyou/juutaku-shukuhaku.html
このように事業者によって届け出先も大きく異なることが分かる。
こうした特徴の他、事業者がいくつか留意しなければいけない点も同時にいくつか浮かび上がってくる。エイジィの高田社長は次のように語る。
・施行後、違法民泊に対する罰則が厳しくなることが予想される
・年間の営業日数変更により、現在出ている調査結果以下の収益となる可能性が高い
・希望する法律・条例が変わる場合も発生する
⇨実際に図面を持参して各機関へひとつひとつ確認を取ることが必要不可欠
これらの新法の特徴から、慎重なシミュレーションを行った上で無用なトラブルを回避することが事業者には必須となるため、各事業者の慎重な対応が今後求められる。
詳しくは... 民泊リノベに向けた法制度のポイントと対策
https://www.reform-online.jp/seminar/12445.php
では、これから合法的な民泊として参入するために必要な建物の条件や制度は、どのようになっているのだろうか。主に新法型民泊として届けるのと、旅館業法による運営の許可を得る2つのケースに分けられる。
新法型民泊では住宅設備があること、また自動火災報知器、誘導灯、非常用照明、消火器などの消防設備の設置がされていることが建物要件として求められている。つまり、消防設備を設置すれば、一般的な住宅がそのまま民泊として運営することができる。その一方で、180日間という営業日数制限があるため、家賃の高い都市部で行うことが困難とされている。
旅館業法の許可を得る民泊では、フロントの設置や宿泊人数に応じたトイレ・シャワーの増設、脱衣・洗面スペースのセパレイトなどが必要とされている。都市部では180日制限を含む新法型民泊では収益が上がらないため、旅館業法による許可を得た民泊が中心になるとされている。
この際、旅館業法で運営するには区の許可が必要とされるため、今後非常に審査が厳しくなることも予想されている。
また民泊新法に施行に合わせ、各自治体が民泊関連の条例を制定しようという動きも見られる。今後どのような民泊を運営するにせよ、各自治体の動向に注視する必要がありそうだ。
3.民泊リフォームの具体例紹介
活発化していきそうな民泊業界だが、実際にどのような民泊リフォームが行われているのだろうか。それぞれ異なるリフォーム事例を紹介していく。
―民泊リフォームとは?
このように民泊の存在がポピュラーになりつつある中、今注目されているのが民泊リフォーム事業だ。
民泊リフォームとは、空き物件や賃貸物件を民泊物件にするため工事することを指す。
近年海外からの観光客が急増し、ホテル不足が深刻を極める中、観光需要により応えることができる事業として注目を集めている。最近では、民泊リフォーム格安パックなども登場している。
外観は何の変哲も無いワンルームマンションだが、リフォームによって外国人観光者向けの部屋作りへと生まれ変わった
詳しくは...「民泊」ブームでリフォームに脚光!
https://www.reform-online.jp/news/renovation/8276.php
―なぜリフォーム自体が必要なのか?
前述のとおり民泊を取り巻く環境は、今年6月に施行される住宅宿泊事業法、いわゆる「民泊新法」により大きく変わる。とりわけ今まで民泊営業が不可能であった住宅街等でも民泊事業を行うことが可能となることから、民泊物件をリフォームをしたいというホスト、新たに民泊リフォーム事業を始めたいと考える建築事業者が増えている。詳しくは「2.民泊の現状と法整備」で解説している。
今後はホストや物件を貸し出す企業が収益を伸ばす上で、リフォームが必要とすることが増えていきそうだ。特に元々賃貸として貸し出していたが空室が続き、リフォームして民泊に生まれ変わらせるケースなどがある。また、メーンターゲットであある外国人旅行客にウケる部屋に改装するような場合もある。
このような民泊リフォーム需要が増えることを見越して、大手企業もこのビジネスに参入している。現在、楽天と不動産サイト「Homes」と運営するLIFULLが参入しており、民泊リフォームへと参入してくる有力企業もありそうだ
―ターゲットは海外観光客
民泊のメーンターゲットは、何と言っても外国人旅行客。民泊予約サイト「STAY JAPAN」を運営する百戦錬磨(宮城県仙台市)では、マンション一棟を全て民泊にするという大胆な取り組みを大阪で実施。室内に日本風のインテリアを置き、茶道や着物の着付けの体験もできるユニークな物件となっている。
詳しくは...百戦錬磨、マンション1棟買収 44室を民泊に
https://www.reform-online.jp/news/renovation/11959.php
―賃貸物件を改修
こうしたマンションの民泊化の影響等を受け、賃貸物件を民泊化する動きも出てきている。入居がつかない物件を、収益化する1つの方法としても注目を集める。
賃貸マンションの2階部分を民泊化した例。損益分岐点を超える安定した稼働率を維持しているという
詳しくは...アンビエント、賃貸を民泊物件リフォーム
https://www.reform-online.jp/news/developer/11328.php
―新しい民泊の形
こうした収益獲得・改善を目的とした民泊リフォームが行われている一方で、新しい形の民泊も注目されている。2017年3月に千葉県船橋市で設立された「あんど」では、様々な理由で住む場所を失くした社会的弱者への支援策をリポートしている。ここでは、火事によって家を失った人、刑務所を出所後に住まいがない人など、様々な事情を抱えた社会的弱者をサポートする体制が整えられている。
西澤希和子社長と、友野剛行社長
詳しくは...あんど、民泊で仮住まいを確保 社会的弱者救う術
http//www.reform-online.jp/news/developer/11898.php
―人気の部屋の作り方は?
民泊の在り方は急速に多様化が進んでおり、今後多様なニーズが増えていくに従ってさらに新しい仕組みの民泊が作られていくことが予想される。
独特な民泊が増え続けていく中で、事業者はどのようにして人気を呼ぶ家づくりを進めているのか。民泊リフォームを行う際、オーナーが考えなくてはならないのが各部屋の構成。住宅デザインプラットフォームのhouzzでは、家具の選び方から部屋やコーナーへの役割の持たせ方、安全性など民泊物件として魅力的な空間作りのヒントを紹介している。
詳しくは...民泊で人気を呼ぶ家づくりのコツは?~世界のハウズから~
https://www.reform-online.jp/news/reform-shop/10696.php
4.大手企業から見た民泊
―大手企業の注目度、参入は?
盛り上がる業界には大手企業の参入が付き物ではあるが、事実民泊事業に大手企業が参入することは現在活発化している。参入に限らず、すでに民泊ビジネスを提供する事業者との連携も行われている。最近では、大手旅行会社JTBと民泊事業を手掛ける百戦錬磨が業務提携を行い、広範な民泊事業の展開を目指している。
詳しくは...JTBと百戦錬磨、民泊事業で提携
https://www.reform-online.jp/news/renovation/12157.php
2018年1月より開始した計画では、大手企業同士の連携も注目されている。
楽天と不動産情報「ライフルホームズ」を運営するLIFULLは、共同で新会社「楽天LIFULL STAY」を設立し、民泊の仲介を行うことを決定した。LIFULLが持つ不動産ネットワーク、会員9000万人の楽天経済圏を合わせて最大の民泊プラットフォームを完成させることがねらいだ。
左から楽天の山田善久副社長、楽天LIFULL STAYの太田宗克社長、LIFULLの井上高志社長
詳しくは...楽天とLIFULL、民泊に参入
https://www.reform-online.jp/news/developer/11519.php
このような現状を鑑みると、大手企業からも民泊リフォーム事業は大きく注目されているものだといっても過言ではない。こうした流れの中で、大手企業がどのようにして売り上げを伸ばしていくのか、今後の動向が注目される。
5.民泊オーナー向け事業・情報紹介
業界の適正化も進められ、民泊リフォームが注目を集める中、新規事業者が運営を円滑に進めるためのツールやサービスも多く登場し始めている。ここでは実際に存在する事業者向け情報を紹介していきたい。
―運営に役立ちツール・サイトは?
(1)民泊ホスト向けマニュアル作成サービス
民泊の運営方法をまとめたマニュアルがほしいと思う民泊オーナーは少なくないはず。ここでは投資会社のネクストレベルが、物件の仕入れから日々のオペレーション、トラブル対応に至るまで実際の民泊運営を通して得たノウハウを民泊運営マニュアルとして集約した。競争が激しくなるなかで、どのようにして他の民泊と差別化を行うか、そういったノウハウが集約されている。
民泊運営マニュアル「Qiao」の目次
詳しくは...ネクストレベル、民泊ホスト向けマニュアル作成
http://www.reform-online/news/developer/11064.php
(2)民泊運営ツール
当時若干22歳の留田紫雲社長が立ち上げたVSbias(ブイエスバイアス、東京都新宿区)では、収益率を高める改修プランのコンサルティングツール「エアリノベ」、予約管理、ホストとのやり取りなどを代行する管理一元化ツール「AllinBnB(オール・イン・ビーエヌビー)」を展開している。事業内容が広い民泊リフォーム業者にとって、こうした民泊運営ツールは手助けとなるであろう。
詳しくは...ブイエスバイエス、大学生で起業 民泊運営ツールで首位目指す
https://www.reform-online.jp/news/developer/11062.php
(3)民泊仲介サイト
一般的な民泊仲介サイトと一線を画すサービスで注目されるのが、ダイバージェントの展開する民泊仲介サイト「トリップビズ」だ。ここではオーナーが、企業の登記謄本を同社に提供できる機能が存在しており、リスクへの意識を心配する法人利用へのハードルを下げることをねらいとしている。
詳しくは...ダイバージェント、民泊仲介サイト「トリップビズ」オープン
https://www.reform-online.jp/news/reform-shop/10872.php
(4)合法民泊改修のツボ
物件を合法的な民泊として運用する際に必要なリフォームはいくつかある。民泊リフォームを手掛けるxxx(エイジィ)に最新の実例を聞いた。築40年規模のマンションの1室を例に、トイレの数、バス、洗面水まわりのリフォームポイントなど合法民泊改修のためのツボが紹介されている。
詳しくは...xxx(エイジィ)、合法民泊改修のツボ
https://www.reform-online.jp/news/renovation/10867.php
6.まとめ
このように民泊リフォームは、個人から大手企業に至るまで様々な層からの注目を集め、その市場規模は今後さらに成長していくことが予想される。市場が広がる一方で、どのようにして違法な民泊を取り締まり業界全体を適正な形で発展させていけるかどうかは、今後の課題になっていきそうだ。今後成長を続ける民泊業界の行く末に、今後も目が離せない。
参考及び出典
民泊サービスと旅館業法に関するQ&A
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000111008.html#HID3
国土交通省 観光庁 住宅宿泊事業法
http://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/sangyou/juutaku-shukuhaku.html
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