中古住宅売買のプロセスを公開 米・カナダで人気

第4回　『Buy Me （米・カナダ・HGTV）』

　米国をはじめ海外先進国の多くでは、既存住宅流通シェアが新築を上回っている。それだけ中古住宅売買が盛ん、ということだが、契約成立までのプロセスは平坦ではない。「世界のリフォーム・中古住宅テレビ」第4弾では、米国とカナダで人気の中古住宅関連番組を紹介する。

住宅調査から交渉まで激論の様子も紹介

　「Buy Me」は、米国とカナダの住宅専門のケーブルテレビHGTVの中で、最も人気のある番組の１つと言われている。実在の売却話を題材に、住宅売却の際の様々なプロセス、問題の解決法などについて紹介している。住宅調査から交渉の様子、金銭に関することと、そこで生じるストレス、売却者と不動産業者との間の激論の様子まで、非常にリアルな局面も映し出している。こういった問題が実際に起こりうるというリアルさを分かりやすく、説得力をもって視聴者に訴えかけている。

　準備段階で、時間やお金がないために売り手側がリフォームを怠ると、時には価格交渉や住宅診断で予想外の展開に発展することが多いようだ。例えば、ある回のエピソードでは、カナダ･モントリオールに住むヘンリー＆ナタリー・スターン夫妻が戸建て住宅を売却する話が紹介される。

　娘が進学を機に自宅を離れるので、3つの寝室があってプールも付いた広い住宅を売って住み替える計画を立てている。8年前にこの住宅を購入した時の価格は約46万ドルだった。近隣コミュニティーの地価上昇に乗じて、今回は希望売却価格を87万5000ドルに設定し、不動産会社に仲介を依頼した。

リフォームの不備が問題に

　スターン夫妻は当初、「価格を下げるつもりはない」と考えていた。価格設定には自信があった。夫妻から見れば、この住宅は豪華で美しく、設定価格に十分見合うはずだった。しかし、オープンハウスを始めても思ったほど見学者が現れない。設定価格が高すぎるのだ。このあたりから、スターン夫妻の自信が揺らぎ始める。

　ようやく購入希望者からオファーがあったが、住宅の給水設備の水漏れやプールの壁汚れなどが指摘され、価格が折り合わない。スターン夫妻のいらだちが募る。交渉が長引き、ヘンリーは「向こうの戦略だ」と不満をぶつける。しかし、インスペクター（住宅診断士）が住宅の劣化状況を客観的に明らかにすることで、双方が歩み寄り、価格交渉が前進。価格は75万ドルで合意となり、契約書にサインが行われた。

オーナーが売却を希望し、オープンハウスの看板を出して見学者を待つ

ヘンリーとナタリーの夫妻は、プール付き住宅を売却する計画を立てるが、設備の老朽化が見つかり、価格変更を余儀なくされる

インスペクターによる住宅診断がカギ

　多くの場合、インスペクターという第3者による診断が決め手となって合意がなされるようだ。契約成立によって、売り手側の試練がようやく終わる。「住宅売買は単なるビジネス契約に収まらず、感情がローラーコースターのようにアップダウンするプロセスでもある」というナレーションが印象的だ。

　もともとは2003年からカナダで放映され、2005年に米国でもスタートした。撮影場所は、カナダではモントリオールを拠点に、最近は主要都市であるバンクーバーやカルガリーに範囲を広げている。米国ではノースカロライナ州のラレイ、コロラド州のデンバーが中心。これらの都市は米国の中で比較的、住宅売買にリーズナブルな地域であるという。

≪ 番組概要 ≫
番組名　＊　Buy Me
放映テレビ局　＊　米、カナダ・HGTV
放送年　＊　カナダ＝2003年～、米＝2005年～
HGTVのHP　＊　http://www.hgtv.com（米）　http://www.hgtv.ca（カナダ）