《連載・経営Before⇒After》DX、ココでつまずく?!最大の関門は、システム間連携&社内浸透率
経営Before⇒After
~船井総合研究所~Vol.4
前回の4月記事では、DX全体の設計図である「DXジャーニーマップ」の描き方をお話しました。DXジャーニーマップを描ければ必ずDXが成功するとは限りません。実は、進めていく中でできないことが分かったり、不自由を感じたりして、結局中途半端に終わってしまうことも多発するのがDXです。今月の記事では、DX化にあたって失敗する最大の理由を2つご紹介いたします。
DXのよくある失敗パターンは、たった2つしかありません。1つは、「進めてみたらシステム間連携ができなかった!」というパターン。もう1つは、便利だと思って導入したのに、社員から反発されたうえに、誰も使わなくなってしまったというパターンです。
「対応していません」「連携できません」に注意!
まず1つ目のシステム間連携ができなかった! というケースを具体的に見てみましょう。例えば、顧客管理・施工管理・入金管理を一貫して行いたいと考えているとします。つまり、顧客情報、そのお客様の現場の施工情報と履歴、入金状況が、一画面で見られるようにという意図で、3システムを連携する必要があるという状況です。
顧客管理と施工管理は、システムAを使うことにしましたが、システムAでは経理担当が使いやすい入金管理機能を搭載していないので、入金管理専用システムBを導入することにしました。顧客管理・施工管理・入金管理のそれぞれの業務効率化を図れそうに思えたので、契約をしました。
しかし実際に導入してみると、入金管理システムBから、顧客情報&施工管理システムAに「入金済み」という情報を飛ばせませんでした。その結果、営業担当者が入金されたのかどうかを確認するには、画面上での確認ではなく、昔ながらの方法で経理への確認をするという作業をなくすことができませんでした。
このように、契約した後にシステム間連携ができないことが発覚すると、費用がかかるのに期待した効果が得られない状態に陥ります。したがって、DXジャーニーマップを描く段階から、異なるシステム同士の連携に対応しているのかを、確認しておく必要があるのです。
連携のパターンは大きくまとめると図1のとおりです。ベストは、API連携に対応しているシステム同士を繋ぐこと。RPA連携はリアルタイム更新ではない点、CSV連携は手作業が発生してしまう点において、そもそもDXの本来の意義を打ち消してしまうからです。API連携で完結するシステム間連携の具体例は、次号以降にご紹介していきます。
しかし、まだまだAPI連携に対応していないシステムの方が世の中には多いのが現状です。これまで使っていたAPI連携未対応のシステムを継続して使いたいという会社もあるでしょう。したがって、API連携に未対応のシステム同士を繋ぐために、「API連携は対応していないが、CSVでの連携でなら可能」とか、「RPA連携はできるが、データがリアルタイムに更新されるわけではない」等、どこまで会社として妥協するかも重要になります。
社員の「新しいもの」アレルギーに注意!
2つ目は、導入したシステムが、結局使われなかったというケースです。使われなくなってしまった理由はさまざまですが、社員が抱える変化適応のストレスが一例です。たとえば、ルーティンが変わる、画面操作方法が変わる、新しい仕事が増えるのではないかと不安になる等、思い当たることもあるでしょう。
経営者は、DXを3年後、5年後のための経営戦略としてとらえ、競争優位戦略であることを理解して進めようとしていることでしょう。しかし一般社員は、いま目の前の案件を忙しい中でこなすことに精一杯。新しい取り組みへの適応のストレスは極力避けたい心理が働くので、ストレスばかりに目が行き、新しい取り組みには前向きになれないものです。
慣れや環境適応には、3カ月ほどの期間が必要であり、その間の「我慢」を経ればDXの取り組み自体がより血肉になっていきます。そのために、DXの導入期においては、近視眼な視点を持つ社員に決定権を委ねるのではなく、経営戦略としてのDXを経営者自身がトップダウンで進めていくことが成功の秘訣と言えるでしょう。
とはいえ、経営者が実務を行ったり、システムの特徴を調べたりすることが困難なこともあるはずです。その場合には、DXプロジェクトチームのようなミニ組織を作って、社長のサポートメンバーを配置するのも一手です。
船井総合研究所 リフォーム支援部
マネージャー 石田朝希 氏
リフォーム支援部の紹介
船井総合研究所リフォーム支援部は、「家を直す」施工会社を地域一番店化する経営コンサルティングを行っています。ビジネスモデル構築サポートによる業績アップも当然のことながら、DXによる事業の高生産性化や働き方改革など、業界の未来を牽引するグレートカンパニーづくりを支援しています。
最新記事
【連載記事一覧】
- 《連載・経営Before⇒After》リフォーム会社のDX基準を総まとめ、これからの課題をセルフチェックしよう!
- 《連載・経営Before⇒After》リフォーム会社のデジタルシフト、本当に成果が出た会社は「平均訪問回数」を計っていた!?
- 《連載・経営Before⇒After》デジタルマーケティングで、「今リフォームしたい顧客」を見える化しよう!
- 《連載・経営Before⇒After》実はこんなに進んでいた!?中小リフォーム会社のデジタルマーケティング
- 《連載・経営Before⇒After》「中小企業デジタル化応援隊」を活用してDXの一歩を踏み出そう
- 《連載・経営Before⇒After》業績向上&利益率アップに直結! 施工管理のデジタルシフト事例
- 《連載・経営Before⇒After》リフォーム会社のための「オンライン営業」入門
- 《連載・経営Before⇒After》デジタル化って本当に必要?中小企業のDX成功事例と具体的な効果とは
- 《連載・経営Before⇒After》DX、ココでつまずく?!最大の関門は、システム間連携&社内浸透率
- 《連載・経営Before⇒After》DXに取り組む上で大切な全体設計図の作り方
- 《連載・経営Before⇒After》週休2日、残業2/3で粗利1.5倍も可能!劇的DXの設計図
- 《新連載・経営Before⇒After》労働人口減少時代!中小企業の生存戦略