第9回 『Holmes on Homes』
助っ人ホルムズ氏が解決
住宅の性能アップのための住宅改修が、不幸にして欠陥リフォームだったら―――。そんな事態を防ぐには、事前の情報収集が欠かせない。「世界のリフォーム・中古住宅テレビ」第9弾では、リフォームで注意すべき構造上の欠陥や、悪質業者からの自衛方法を伝授するTV番組を紹介する。
構造上の問題が次々明らかに
「Holmes on Homes」は、カナダ人の大工の棟梁マイク・ホルムズ氏(50才)が欠陥住宅や欠陥リフォームで泣いている人を助けにいくHGTV Canada制作の住宅番組だ。2001年からカナダ、アメリカ、英国、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカで放映されている。番組スタート時は30分だったが、人気があるので60分に拡大された。
番組ホストのマイク・ホルムズ氏
ホルムズ氏が壁や床をはがすと、アスベストや寄生虫、あるいはオイルタンクが中に放置された壁、めちゃくちゃで危険な電気配線、ずさんな屋根の修理、土台に乗っていない柱、シンクの配管ミス、断熱材なしのガレージの天井など、構造上の欠陥が次々現れる。
リアルな展開で視聴者が感情移入
ホルムズ氏は「This is unacceptable (こんなの許せない!)」とか「This is illegal(これは違法だ!)」と嘆きながら、どこがなぜ問題なのかを丁寧に説明し、最後はきっちり欠陥を修復して、依頼主の希望以上の家に仕上げて終わるという番組構成だ。
いずれもリフォームや修繕後の現場だから、ホームオーナーにとっては悪夢だし、視聴者も「もし自分の家だったら」と感情移入するので、ショーとしての面白さも満点だ。しかも、構造上の欠陥がほとんどなので、たいてい土台からやり直さなければならず、壁や床をはがしたり、フォーム状の断熱材を吹き付けたりと、デザイン的なリフォームに比べて映像がダイナミックで、それでなくてもプロレスラー顔負けのたくましい肉体を持つホルムズ氏がスーパーマンに見えてくる。
「基金」設立し後継者育成も
ホルムズ氏は、建築・リフォーム業界で20年以上のキャリアがあるプロの建築家だ。「Holmes on Homes」のほか、住宅インスペクションがテーマの「Holmes Inspection」など複数のテレビ制作を手掛けている。
これらの番組が世界的に成功し、高視聴率を次々に記録したことで、ホルムズ氏は英語圏では有名人となった。「施主に建築についてよりよく知ってもらうことが建築業界全体のレベルアップにつながる」と話すホルムズ氏は、施主の啓発を自らの使命と課し、業者の選び方や契約、施主の権利に関するテレビ番組の制作に取り組んでいる。
さらに、「ホルムズ基金」を設立。大工を目指す若者に奨学金を出したり、建築業界でのキャリア形成に関する情報を提供したりしている。カナダではリノベーションが盛んだが、職人不足が問題となっている。「大工の仕事はクリエーティブで報酬も良いが、理解が得られにくい。若者はもっとこの業界を目指してほしい」と後継者育成に力を入れている。
建築を専攻する学生に奨学金が贈られる
ホルムズ氏は著作業も展開。インスペクションについての"Holmes Inspection Mike Holmes"はベストセラーになっており、新聞のコラムも担当している。