壁最終回 中古住宅流通ビジネスは今後どのように様変わりしていくのか。
価格やデザインより重要なことは?
昨年末にリフォームを前提とした築30年の戸建て購入のお手伝いをしました。費用は耐震補強なども入れて約1700万円。外観の意匠が気にいっている、などの理由で新築ではなく、リフォームを選択されました。
最近では、ホームページやリフォーム雑誌が充実し、お客さん自身で事例などを見て候補となるリフォーム会社を決めていることがほとんどです。ただし、デザインや予算などから候補会社を選んできたお客さんも、「この会社にしよう」と決める最後の判断要素はそこから離れて、ただ1点「分かりやすく説明してくれる会社」となる傾向があります。
今回も4社ほど見積もりを取って検討をしてきましたが、うち1社がほぼ1日がかりで建物調査をしてくれ、その結果、「工事中に何か問題が生じてもこの価格でやります」という見積もりを提示してきました。他社の「壁を壊して見たら場合によっては費用が変わるかもしれません」という見積もりに対して「リスク負担込み」の見積もりは、お客さんにとって分かりやすいだけではなく、安心させてくれました。価格は4社中2番目に高く、デザイン的には3番目の位置付けでしたが、最終的には「お客さんの分かりやすさ」に視点を合わせたこの会社に依頼することになりました。
今後は成熟化の中でどう勝負していくか
すでに中古住宅流通ビジネスは「どう差別化していくか」の段階にあります。そしてその中でも、顧客視点に立って「分かりやすさ」をどう表現するかが重要のようです。JBNの中古住宅流通WGで取材をさせていただいた会社の中には、平方メートル当たりの単価でリフォームを請け負うとしている会社もありました。顧客視点でとても分かりやすいと思いました。
ただ、このようなことをリフォーム会社の方に言うと「そんなことは昔から分かっているし、そうしているよ」と言います。でも、出してくる見積書を見ると、どこでも見るエクセルで作ったA4横表で、各金額が建物のどこに当たるのか素人目にはよく分かりません。「これってお客さんが見て分かりやすいものなの?」「横すべり出しサッシがこの部屋のここのサッシって分かると思う?」と聞くと「...」という返答。見積もり一つ取ってもこうですから本人が思っているほどには説明を聞くお客さんは分かりやすいとは思っていないと疑問を持つべきでしょう。
情報過多の時代ですから、どの業界も情報を取捨選択して、顧客にとって有益不利益なものを分かりやすいように表現することが求められつつあります。中古住宅流通ビジネスもその段階が見え始めてきているようです。