このキーワードで検索

有料会員登録で全ての記事が
お読みいただけます

工事契約の代筆はダメ、法的代理人必要

紙面ビューアーはこちら
  • トップ
  • 連載
  • > 工事契約の代筆はダメ、法的代理人必要

工事契約の代筆はダメ、法的代理人必要

モッキンバード法律事務所 川目武彦 弁護士
このエントリーをはてなブックマークに追加

中小企業経営者の味方 川目弁護士が走るVol.9
代筆はダメ、法的代理人必要

《今回のお悩み

 リフォームを頼まれた建物所有者のAさんが、どうも認知症にかかってしまっているようです。介護をしている娘さんにリフォーム工事契約の代筆をしてもらおうと思います。これって問題ありますか?

《川目弁護士のアドバイス

 リフォーム工事契約とは、既存の建物に工事を加えることを契約の内容としています。プロである以上は,建物の所有者と直接会ってご本人の契約意思を確認してから契約を締結しなければなりません。本人が了解していないのに建物に工事を加えてしまうと民事上の問題だけではなく、刑事上の責任問題にも発展する可能性があります。

 ご相談の案件では、建物の所有者であるAさんとは面談済。Aさんが認知症に罹患している可能性があることから、Aさんと契約を締結することを避けて、その介護者である娘さんに契約書を代筆してもらうことをご検討されているようですね。

 しかし結論から申し上げますと、代筆をしようがしまいが、この事案では契約を締結してはいけません。なぜならば,このような方法で契約を締結しても、ご本人の判断能力が欠けているという法律的な問題を克服したことにはならないからです。

 また後々Aさんに裁判所から選任された後見人がついたり、Aさんの状態を心配したほかの親族から契約にクレームがつくことも考慮しなければなりません。Aさんの認知症が進んでいた場合、筆跡が本人ではないことは一目瞭然でしょうから、契約の無効はもちろん、損害賠償請求や刑事責任の追及を受ける可能性もあります。

 このような事案においては、直接Aさんと契約を締結するのではなく、Aさんの後見人(こうけんにん)や保佐人(ほさにん)などの法律上の代理人と契約を締結しなければなりません。このような代理人がいない場合には、家族の方にこのような代理人を選任する手続をとってもらうようにお願いをしてください。

 もっとも、このような手続をとることが煩雑であることから、実際にはご相談のような表面的な便法で契約を強行してしまう事案も相当存在するようです。しかし、そのような法律的に問題がある契約を強行することの意味をよく考える必要があります。お金だけではなく、時間も会社としての社会的信用も失うリスクがあります。それらのリスクにさらしてまで、その契約を締結するだけの意味がありますか?現在のインターネット社会では、このようなネガティブ情報はあっという間に広まってしまいます。


川目法律事務所 川目武彦 弁護士モッキンバード法律事務所 川目武彦 弁護士

埼玉県さいたま市に本部を置く法律事務所。町の工務店、不動産会社、リフォーム会社など、中小企業が直面する問題に詳しい。

この記事の関連キーワード : クレーム モッキンバード法律事務所 代筆 契約

毎日ニュース配信中!リーフォーム産業新聞公式LINE

【連載記事一覧】

リフォーム産業新聞社の関連サイト

PR
PR
  • 広告掲載
  • リリース投稿
  • お問い合わせ
PR

広告

くらしのお困りごとを丸ごと解決するプラットフォーム EPARK
閉じる