野球選手の旧宅を博物館に改修

第5回　『　The Real Estate Pros　』　米・TLC

長年放置され、価格が下がった不動産物件を再生し、売却して利益を出すまでのプロセスには様々な困難が伴う。「世界のリフォーム・中古住宅テレビ番組」Vol.5では、その再生ビジネスに積極的に取り組み、全米でも有名になった不動産会社のTV番組を紹介する。

独自のビジネスモデルを武器に事業拡大

　「The Real Estate Pros」は、2007年4月から放送されている。コーディネーターのリチャード・デービスは、Trademark Propertiesという不動産会社の設立者であり社長である。この不動産会社は、米国南東部サウスカロライナ州のチャールストン市を拠点に、多角的な不動産取引を展開している。

　リチャードは、不動産の業界歴20年以上のベテラン。特に、値下がりした不動産を購入、リフォームして売却し、利益を得る独自のビジネスモデルを武器に事業を拡大した。この活動模様を「Flip This House」というタイトルでＴＶ番組にし、人気を集めた。

　しかし、テレビ局との間でトラブルが起こり、訴訟に発展。リチャードは別のケーブルテレビ局と契約し、現在の「The Real Estate Pros」という新たなタイトルで再び番組放送を開始した。この訴訟問題は、米国でも大きく取り上げられた。

Trademark Propertiesのリチャード・デービス社長（中央）と、社員たち

"靴なしジョー"の旧宅に可能性を見いだす

　この番組で紹介される物件の多くは、買い手が付かずに放置された物件だ。リチャードはそこに可能性を見いだし、投資して利益の出る物件に再生させる。

　第一回の放送のタイトルは、「Homerun For Trademark」。"Shoeless Joe"（靴なしジョー）の愛称で親しまれた野球選手、ジョー・ジャクソン（故人）の旧宅の大規模な改修計画が紹介された。ジャクソン氏は、1919年のワールドシリーズで八百長をしたとして永久追放されたメジャーリーグ選手。サウスカロライナ州出身で、引退後は地元のセミプロリーグでプレーした。

　ある日、リチャードの息子が「ジョーは本当に八百長をしたの？」と疑問を投げかけた。それをきっかけに、自らも野球ファンのリチャードは、この野球選手の名誉回復に乗り出す。リチャードは、ジャクソン氏がサウスカロライナで暮らした旧宅が売りに出ていることを突き止め、「Shoeless Joe 博物館」に大規模改修する計画を打ち出した。

　野球ファン集客のため、市中心部にある野球場の近くに移設し、観光施設に再生させた。このプロセスと並行して、リチャードは、アルコール問題で引退した野球選手のメジャーリーグ復帰を手助けした。その様子も番組で紹介され、地元民の関心を集めた。

ジョー・ジャクソン氏の自宅を改修して完成した「Shoeless Joe 博物館」。 ジャクソン氏の写真やユニフォームの展示に加え、土産品を販売している。

リスク大きい場合も挑戦するパイオニア精神

　この番組のもう1つのテーマは、大きな利益が見込まれない物件にも挑戦すること。第2次世界大戦の元兵士、カール・キャノン氏の住宅を買い取り、リフォームして売却するというストーリーが放映された。

　妻に先立たれ、老人ホームで暮らすカール氏は、自宅を売って現金を得て、1週間後にホーム費を支払わなければならない。その自宅は長い間放置され、内部は足の踏み場もないほど荒れ果てていた。リフォームしても売れる見込みは少ない。しかし、カール氏の人柄に魅了され、戦争経験者への尊敬も込めて、リチャードはこの家の改修を決意する。

　困難に見えた改修は、リチャードと社員たちのチームワークで完成し、最後に買い手も見つかってハッピーエンドとなった。

　「リスクが大きいほど、得るものも大きい。だから僕はパイオニアでありたい」と、リチャードは、多難な仕事にも挑戦する意義を話している。

≪ 番組概要 ≫
番組名　The Real Estate Pros
放映テレビ局　米・TLC
放送年　2007年4月～
公式HP http://www.realestatepros.rexruff.com/