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住人が起きて夜寝るまでの行動を考える

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住人が起きて夜寝るまでの行動を考える

YKK AP 住宅パーツ・工法研究室 主席研究員 白瀬哲夫 室長
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日本の住まいと「窓」第9回 ~住人が朝起きてから夜寝るまでの行動を考える~

ダイニングには朝日の恵みを、夕方は西日を防ぐ

昔の住まいは部屋1つ1つにしっかりとした意味付けがありました。"どういう人達が住み、誰が何のために使う部屋なのか"をまず考えて家をつくったからです。現代の家でもそうした意味付けが重要なのは同じです。今回は、これまでお話ししてきた先人たちの知恵を生かした家づくりの具体例をご紹介します。

家族が集うリビングは昔の囲炉裏端をイメージ

 住宅を作るときに、昔の家は集いの空間を一番重視していました。特に昔は庶民が現代のような各部屋冷暖房完備の家に住んでいるわけではありません。囲炉裏の周りに家族皆が集まるのが当たり前でした。人が集まるこの空間は、冬は一番暖かく、夏場も一番風通しがいいようにつくられていました。家族全員が毎日集う空間だけに、年中快適に過ごせるように作られていたのです。

 当社で提案したリビングは、この囲炉裏をイメージして作っています(イメージ1)。リビングというのは自然に家族が集まる空間でなくてはなりません。大人数雨が集まって団欒できるのはもちろん、南面に見通しのよい窓を置いて座った時に外の景色が目に飛び込んでくるようにします。家の主は全体を見渡すことができ(A)、窓際に座った人も後ろを振り返ると一番いい高さ、大きさで景色が飛び込んでくるようになっています。人間は、気持ちを落ち着かせるときに外が見えた方がいいですし、さらに緑が見えた方がいいのです。

【イメージ1】リビングの一例

【イメージ1】リビングの一例

 また、現代では窓際に大画面テレビを置く人が多いのですが、それによって窓を塞ぎ、その向こう側の景色が見えないというケースが非常に多くなっています。そこで、大画面TVを置くことを想定して背面は壁とし、間柱の間の空間を使ってTVを邪魔しないような位置に小窓を設置しました(B)。また、TVの上部に窓を付けることで光の重心が高くなって、部屋が明るくなることで人間の心理を明るく、快活にする効果が期待できます。リビングはTVを見る空間だけではありません。家族みんなが集まるのに一番心地いい空間にする必要があるのです。

掃出窓の向こうはテラスくつろぎの空間をプラス

 次にキッチン側、つまり部屋の北側を見てみましょう(イメージ2)。部屋の西側は南のダイニング側から日差しが入ってくる構図になります。したがって、キッチンの位置や南側の窓の高さを調整し、日差しの影響を受けないようにします。そして西側は壁にします。西に腰窓をつけるなどすると、夕方西日が入ります。夕食準備などしていると煩わしいのです。

【イメージ2】キッチン&ダイニングの一例

【イメージ2】キッチン&ダイニングの一例

 キッチンの向こう側のダイニングは朝食をとるスペースですが、ピアノの上、つまり東側の小窓から朝日が入るようにします(A) 。高い位置で部屋全体を明るくし、朝の朝食作りなど、朝には朝の恩恵を受けられるようにします。

 その隣にはオープンテラスを」設置しました(B)。以前もお話ししたように、掃出窓は場合によっては無用の長物になってしまいます。掃出窓はそこから出て行く理由がないと生きてこないからです。オープンテラスでは、夏なら、東のまだ日差しの強くない時間帯に、ここでくつろぐとか、春は草花を愛でながら読書をするとか、生活を豊かにする時間を過ごすことができます。オープンテラスを作ることで、掃出窓を有効に活用できます。

 部屋づくりでは、その家の住人が朝起きてから夜寝るまでの行動パターンを考えます。その時間帯は、どの家族がここに来て、どんな行動をとるのか、そしてその時にどんな心理状態で、どんな気持ちになりたいかを考えて作ることが大切なのです。

YKK AP 白瀬哲夫

YKK AP株式会社
住宅パーツ・工法研究室 主席研究員 白瀬哲夫 室長

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