第11回 ~高位置の小窓は緑を見せる癒し空間に~
今回は、住まいそのものの話ではなく"個の空間"の話です。それぞれの部屋には役割に応じてあるべき光の入り方や窓の位置など、理想的な配置があります。それは住人の年齢やライフスタイルなど個々の状況などによっても変わってきます。今回は寝室と子供部屋のリフォーム例を紹介します。
50代~60代夫婦が快適に過ごせる寝室
寝室が心地よい空間であるためには何が大切なのでしょうか。寝室は大切な睡眠のための空間ですから、当然、冬は寒くないように、夏は暑さで目が覚めないように心地良い眠りと目覚めを迎えられるような空間にすることが大切です。また、体内時計をちゃんと朝の時間に戻すためにも朝の日光で自然に起きられることも重要です。
しかし、実際には心地よい眠りと目覚めを実感している人は少ないのが実情です。特に女性や高齢者になると入眠しづらくなりますし、朝はまだ眠くてもパートナーの起床によって目が覚めてしまうことも多いためです。
そこで当社では、こうした状況を考慮し、50代後半~60代の夫婦が快適に過ごせる寝室のリフォーム案を提案しました(イラスト1)。テーマは、「お互いの気配を感じつつ、心地よく眠れる寝室」。ニーズとしては
- 将来のことを考え、寝室を1階に移したい
- 夜、読書やPCなど自分の時間を過ごしたい
- お互いの眠りを邪魔したくない
という3条件があり、こうした条件に配慮しました。
イラスト1 お互いの気配を感じつつ、心地よく眠れる寝室
まず2部屋を1部屋にし、パーテーションで間仕切りをしました。夫婦仲が悪いからではなく、お互いの時間で眠りを妨げないための"愛ある間仕切り"ですからご安心を。ただ、高齢になればなるほど完全に仕切るのは不安なもの。体の調子が悪くなった時に伝えられないからです。そこで互いの気配が感じられる程度に緩やかに仕切ることにしています。
さらにこの案では窓も工夫しています。一般的に部屋の中央に掃き出し窓を設置するケースが多いのですが、冬場になると窓から体に直接当たって健康にもよくありません。そこで東側の窓を2つに分け、ベッドの両側に配置しました。これなら朝の日差しが緩やかに入ってくる上、さわやかな風を取り込むこともできます。
また、イラスト左の窓(北側)は高い位置にあって緑が見られるようになっています。2面採光の1つがちょっと高い位置にあることで、部屋全体を明るくしてくれる上、手元に直射日光が入らないようにしています。窓の位置次第で部屋の快適性は大きく異なるのです。
子供の成長に合わせて空間を変えられる部屋
では次に、子供部屋のリフォーム案を見てみましょう(イラスト2)。使用者は小学校中学年から高学年を想定し、「成長と学びに配慮した子供室」をテーマとしました。ニーズとしては
- 成長に合わせて、子供室を使いたい
- 勉強に集中できる空間にしたい
- 部屋をスッキリさせたい
という3条件があり、これらに配慮しました。
イラスト2 成長と学びに配慮した子供室
この部屋の窓も寝室同様、北側(イラスト左)にあります。北側の光は直射日光ではないので、目に優しいのです。東だと朝は強すぎ、夕方は光があまり入らなくなります。しかし北側の光は朝から夕方まで一日中安定しています。
子供部屋は、子供が小さい頃は遊ぶ空間にスムーズに移行できるように考えました。兄弟が小さい頃は1つの部屋でよいのですが、いずれは別々にできるよう可動式のパーテーションで間仕切っています。寝室と同様に、2つの部屋を完全に区切らず、互いの気配を感じられるようにすることが大切で、そのような時に可動式のパーテーションは有効です。完全個室で快適にし過ぎると子供はずっとそこに引き込もってしまうので、このあたりのバランスが重要です。
また、パーテーションなら、子供が出て行った後、壁を取り払ってお父さんお母さんの趣味部屋にすることもできます。
個々の部屋づくりは、快適な環境づくりに加え、長期的な視野で考えることも大切なのです。
YKK AP株式会社
住宅パーツ・工法研究室 山名一郎室長
